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 柴本光義(しばもと・みつよし)は便利屋だ。  法に触れない範囲で頼み事を請け負い、解決のため動くことを生業(なりわい)としている。  舞い込む依頼のすべてを、何も考えずただ解決すれば良いとは限らない。口癖のように彼は言う。  悲しいことだが、騙して違法行為に荷担(かたん)させようとする、あるいは見知らぬ誰かを傷付けさせる意図のある内容がしばしば紛れ込むのだ。  法を犯さず、意図して誰かを傷付けることは柴本のポリシーに反する。  だから、可能な限り依頼人と言葉を交わし、その言動に嘘や悪意のが混じっていないかのだ。  種族を問わず、人類諸族(マンカインド)の感情は匂いに宿る。表情や声を取り繕っても体臭までは誤魔化せない。それが同居人の持論だ。  けれども今回の依頼では、それを真っ向から否定されたとみえた。嗅覚の鋭さを彼にとって、いたく事態だったらしい。  耳の後ろや首のまわりを()いてあげるうちに傷心も和らいだようで、何があったのかをぽつぽつと語り始めた。  **********
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