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昼近くにまで時間を溯る。
端末に着信があったので確認すると、以前に登録していたケータリングサービスから、配達を依頼する旨のメッセージが届いていた。
その文面を読んで柴本は、思わず首を捻った。
陸上防衛隊を辞めて間もない頃には、配達員としての仕事には大いに助けられたらしい。けれども便利屋としての稼業が起動に乗ってからは、自ら興した事業に専念するために退会手続きを行った。
今から数年前のことである。
だが今日になり、退会した筈のサービスから配達依頼のメッセージが届いた。
手続きを済ませたのが彼の記憶違いだったのか、はたまた運営会社側に落ち度があったのか。
今となっては原因は分からない。マンカインドエラー、すなわち人が介在することで起きる失敗は、あらゆる状況で発生し得るものだ。
ちょうどそのとき、他に依頼はなく、スケジュールに空きがあった。
折角なので、再び退会手続きをする前に依頼を受けることにしたという。
自営業者としては間違った選択じゃなかったと、わたしの膝の上に頭を乗せたまま柴本は語る。
「けど、もう少し用心すべきだったかもしれねぇな」
声に悔しさを滲ませながら続けた。
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