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 私には、みんなと違う、私という個性をどのように育てればいいのか、それが少しも分からない。  ねぇ、どうしたらいいの?  どうしたら、みんなと一緒に、平等に、手を繋ぎながら仲良く過ごせるの?  ――エラー  みんなと一緒なんて無理なんだ。  ――エラー  平等なんて実現しない。  ――エラー  感情の、熱のない者は。  好きな筆箱を選んでいたら。  可愛い鉛筆を使っていたら。  好きなものは好きとアピールして良くて、それを持つことを否定されない過去があったなら。私の今は、変わっただろうか。  分からない。  ぐるぐるループを続けている。  無限ループから抜け出せない。  私は、できるだろうか。  このループの終了条件を、正しく打ち込めるだろうか。  この、機械的な思考を、制御できるだろうか。  全部全部、誰かのせいだ。  個性を殺した誰かのせいだ。  それを「私にはどうにもできない」と放り投げたお母さんのせいだ。  鬱々とした沼に嵌りながら、ただ自己保存に必死になる。  あぁ、ガキくさ。  身体はもう成長が止まるほど、大きくなったっていうのに。  心、ガキくさ。  リファクタリングしなくては。  いや、いっそ、リライトしたい。  全部全部、やり直したい。  全部が無理なら、せめて――。  お母さんに撃ち込まれるくらい大喧嘩してでも、フリフリの筆箱に可愛い鉛筆を入れて笑う人生を、私は生き直してみたい。  私の感情は、もう死んでいた。  尖らせようとしても、丸い先端が出来上がる。  周りを敵と認識しても、攻撃できずに防御するだけ。  辛い、辛い。  ねぇ、返してよ。  私らしさを返してよ。  捨てることを半ば強制した、私の好きを返してよ。    ――無くした個性  ――取り戻せずに  ――私は今日も  ――ループの中  ――了――
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