12人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
その後の二人
「先輩、どうします……?」
福田和也はザーザーと降り頻る雨に手を翳しながら隣に立つ佐倉隼人に尋ねた。先程までの晴天が嘘のように、曇天が広がる空からは地面を跳ね返るほどの雨が降ってる。
佐倉は顔を引き攣らせながら雨の止む気配のない空を見上げる。
「俺……甲子園に嫌われてるのかな……」
「いやいや」
球場からは本日の試合の中止を告げるアナウンスが聞こえている。多くの観客が自分達と同じようにこの雨で身動きが取れずにいた。
「せっかく来たのに一試合も見れなかった……」
「でも阪神園芸見れましたね」
「まぁ、たしかに……」
あれは凄かったな、と佐倉は口元だけで少し笑うとTシャツの襟を軽く掴みパタパタと仰いだ。佐倉の首を伝う一筋の汗を見て福田はどきっとする。
(この人は俺のことが好き……なんだよな……)
そう思うと腹の奥が落ち着かない気持ちになった。
高校を卒業して以来の久しぶりの連絡から、訳がわからないまま連れて来られた甲子園。ここで佐倉に言われた言葉は二年間のすれ違いを正すものだった。
あの後すぐに佐倉を追いかけたが、人混みや突然大雨に遮られ、話の続きをできないでいた。
福田は佐倉の首筋から目を逸らし、頭を掻いた。
「この後どうするつもりだったんですか?」
「どうって?」
「帰るとか、飯食うとか……」
「お前は帰りたいの?」
「いや、そうじゃないですけど……何も聞かされてないんで」
佐倉を見ると気まずそうな顔と目があったがすぐに逸らされてしまう。
「そもそも思いつきだったんだよ」
「えっ?」
「夜中にさ、テレビでやるじゃん。甲子園の……あれ見てたらなんか……」
そう言いながら佐倉は福田を見る。恥ずかしいのか少し顔が赤い。佐倉は福田より一〇センチほど背が低く、自然と上目遣いになっている。福田はソワソワしながらも、今度は佐倉から目を離さなかった。
「そんな衝動的な行動だったんですね」
「だから正直この後のことなんか考えてなかった。日帰りでもいいけど……お前も予定があるだろうし……」
自信のなさそうな目で見つめられ、思わず胸がキュンと疼く。自然と笑顔になりながら、福田は佐倉に向き合った。
「せっかくだし帰るのは明日にしませんか? 一応着替えだけ持ってきてるし、先輩もその荷物なら泊まりのつもりでしたよね?」
「まぁ、そうだけど……」
「何か気になること、あります?」
佐倉は少しの間逡巡した後、ボソボソと小さい声で話した。
「お前の気持ち聞いてない……」
佐倉が何を言わんとしているかわからない福田ではない。なにより福田が勝手に諦めた二人の関係を佐倉はこんなにも頑張ってくれているのだ。
福田は軽く深呼吸すると佐倉の目を見ながら自分の気持ちを告げた。
「好きです。高校の時からずっと好きでした。先輩を甲子園に連れて来れなかったダサい俺だけど、付き合ってください」
「うん、はい」
見つめあったままお互い自然と笑顔になる。再開した時からずっとあった緊張がやっと解けていくのを感じた。
少しして周りを見るとすでに他の観客達は移動したよいで、人はまばらになっていた。
「俺達も移動しますか。と言っても、先輩も俺も結構濡れましたね……」
急な雨だったこともあり二人とも全身しっとり濡れていた。夏なので晴れていればすぐに乾きそうなものの雨が止む気配はまだない。移動するにも傘もないため、場所によってはもっと濡れることになりそうだった。
福田がどうしようかと悩んでいると佐倉が控えめに服の裾を引いてくる。どうしたのかと佐倉を見ると、自信なさげな提案が返ってきた。
「俺……心当たりがあるんだけど……」
佐倉に連れられて来たところは甲子園球場からほど近い所にあるラブホテルだった。ホテルを前に唖然とする福田の手を引きながら、佐倉はそそくさとチェックインを済ませた。
急展開に動揺する福田は、まさか佐倉はこういうことに慣れているのかと想像して一瞬胸がモヤっとしたが、エレベーターの中で自分の前に立つ佐倉の耳がほんのり赤くなっているのをみて動揺は愛おしさに変わった。
部屋に入ると福田は佐倉を後ろから抱きしめた。腕の中でビクッと揺れる佐倉の後頭部に顔を埋めて息を吸った。ずっと触れたかった人がここにいる事を実感する。
「おい、嗅ぐな……」
「先輩。期待していいんですか?」
少しの間の後、佐倉は福田の腕をそっと解いて体を反転させた。
「先にシャワー。お前先に使って」
「先輩が先に使ってください。俺は後でいいですよ」
「いいから。どうせおまえ烏の行水だろ?」
ほら早く行った行った、と佐倉に押され福田は名残惜しく感じながら佐倉から離れバスルームに向かった。バスルームはトイレとシャワーブースが一緒になっているタイプで、シャワーブースの扉はガラス戸になっていた。
福田が五分ほどで上がりバスルームにあったバスローブを着て戻ると、佐倉は「俺、時間かかるからゆっくりしてて」と言ってからバスルームに向かった。
福田は所在なげにベッドに座っていたが五分経っても出てくる様子がなかったので、福田は頭の中で今の状況を改めて確認した。
晴れて佐倉とは想いが通じ合い、そして行くところのなかった自分達は今ラブホテルに来ている。期待しても良いかの問いに佐倉は否は返さなかった。つまり……とその先を考えるだけで福田の中心は期待で淡く勃ち始める。
福田は落ち着かない気持ちになり両手で顔を抑えながら肺が空になるぐらい大きく息を吐いた。
よしっ、と福田は気持ちを切り替えてスマホを手に取り、男同士のセックスについて検索をした。佐倉に恋をした時点でそういう想像もしていたし知識としては知っていたが、実際に男とセックスをしたことはない。佐倉がどちらを希望するかはわからないが、福田は佐倉を抱きたかった。抱かれる側は負担が大きい上に準備もいる筈だ。
福田は検索結果から目についたブログ記事を開いた。初心者向けに丁寧な解説が載っている。
解説をはじめから丁寧に読んでいく。そしてある手順に辿り着いたとき、福田はスマホをベッドに放り投げて立ち上がった。そしてそのままバスルームに向かう。バスルームの扉の向こうからはシャワーの大きな音が聞こえていた。
福田は中の佐倉に聞こえるように少し大きな声で話しかけた。
「先輩! まだシャワー浴びてるんですか?」
少しの間を置いてから、佐倉の声が中から返ってきた。
「まだかかる!」
「シャワー浴びるだけでなんでそんなに時間がかかるんですか?」
「いいから向こう行ってろ!」
福田は佐倉の言葉を無視してバスルームのドアノブに手をかけ、捻る。鍵は掛かっておらず、バスルームの扉が開いた。
福田がバスルームに入るとシャワーブースの中には呆然と立ち尽くす佐倉がいた。その足元には透明な液体の入ったボトルが転がっている。
「先輩、一人で準備してたでしょ」
「ち……違っ……!」
佐倉は顔を真っ赤にして狼狽える。福田は構わずシャワーブースに近づき、バスローブを脱ぎ捨てるとサッと中に入った。
「おいっ!」
「先輩、なんで一人でやるんですか。俺にも手伝わせてくださいよ……」
狭いシャワーブースの中で佐倉を優しく抱きしめる。福田の半分勃ち上がったものが佐倉に当たっているがこの際無視する。
佐倉は狼狽えたように手を彷徨わせたが、しばらくすると観念して福田の体に腕を回した
「だって……俺の方が年上だから……」
「だからなんですか?」
「かっこ悪いところ見せたくなかったんだよ……」
そう言うと福田の肩に顔を埋める佐倉に愛おしさが募っていく。
福田が胸が苦しくなってため息を吐くと、佐倉の体がビクッと揺れた。福田はそんな佐倉の背中を宥めるように撫でる。
「先輩はいつでもかっこいいですよ。今日だって全部先輩が頑張ってくれたからで、かっこ悪いのは俺ですよ」
だから俺にも手伝わせてください、と福田が言うと、佐倉は声にならない呻き声をあげた。
「でも……」
「でも?」
「恥ずかしい……」
今日幾度となく大胆な行動を見せて来た佐倉のしおらしい態度に福田の中で何かが弾けた。
福田は手を佐倉の臀部に伸ばた。佐倉が慌てて体を捻るのを力で押さえ、佐倉の割れ目を探る。しばらくすると指先が奥に潜む穴を探り当てた。
「あっ、待って……!」
「ヌルヌルする」
指先で後孔をゆっくり押すと、あまり抵抗もなくつぷりと指が入ってしまう。
「あっ、」
そのまま指を押し込むとヌルッと指の付け根まで入ってしまう。二本目も入りそうな柔らかさに福田は首を傾げる。
「こんなに柔らかいものなんですか?」
佐倉は福田の問いには返事をせず、福田にしがみついたまま固まっている。
福田は思い切ってもう一本指を増やした。佐倉の柔らかい穴は二本の指を難なくと飲み込んでいく。
「あぅ、……んっ」
「先輩……?」
はぁ……と、口で呼吸をする佐倉にドキドキしながら、福田は言葉を続けた。
「もしかして……結構経験ある感じですか?」
「えっ……違っ!」
「じゃあなんでこんな……」
福田はそこまで言って言葉を切った。佐倉が他の人と関係がある可能性に気づき福田の胸にモヤってした気持ちが広がる。
福田は入れた二本の指の抜き差しするよう動かし始めた。
「妬けるな……」
「あっ、……だから……んっ」
佐倉が答えようと肩から顔を上げたのを見逃さず、福田は佐倉の唇を塞いだ。唇を触れ合わせるようなキスから徐々に大胆なものに変わっていく。佐倉が息を吸うために薄く口を開けたところに舌を差し入れると、控えめに舌を触れ合わせてきた。
指で後孔を愛撫しながら佐倉と熱心なキスを交わす。二人の体の間で二つの硬い存在を感じた。
少ししてチュッと音を立てながら唇を離すと、目の前には蕩けた表情の佐倉がいた。
福田は自分にしがみつくように立つ佐倉を剥がして壁の方に体を向かせると、尻を突き出すような格好をさせた。佐倉が少し抵抗しようとしたがそれを後ろから覆いかぶさるようにして封じ、再び指を挿入した。
最初の数回だけゆっくりと抜き差しをしてから、指先で腹側を探るような動きに変えた。そしてある一点をグリっと押した時佐倉の体が大きく跳ねた。
「あっ! 何!?」
「ここっすか?」
佐倉の中の他とは違うコリッとした部分を執拗に撫でていく。刺激が強いのか佐倉は体を捩りながら喘いでいる。
「ちょっ、待って、あっ、んぅ、うっ……」
「後ろで気持ち良くなるのって時間がかかるんですよね。今までの男にやってもらったんですか?」
「だからっ、ちがっ……あっ!」
福田は後ろだけではなく前でゆらゆら揺れる佐倉の陰茎を掴み前後に擦り始める。
「だめっ、むりっ、やっ……つよぃっ」
福田は時折背中にキスを落としながら愛撫を続けた。
「だっ、あっ、イク……イク……あぁ!!」
佐倉は体をビクビクと震えさせながら、前の壁に向かってビュッビュッと精液を吐き出した。膝の力が抜けたのか崩れ落ちそうになる佐倉の体を福田はすんでのところで支え、床に降ろしてやった。
肩で息をする佐倉を横目に、福田はシャワーで汚れをサッと流してから止め、佐倉の隣にしゃがみ背中を優しくさすった。
「大丈夫ですか?」
「ううぅ……」
佐倉は涙目の顔を福田に向けると握り拳を作って福田の方を殴る。しかし体に力が入らないのか全く痛くはなかった。
「調子乗りました、すみません……」
「経験豊富じゃない……」
「えっ?」
「経験豊富じゃないし、誰ともこんなことしたことない……」
「誰とも?」
佐倉はもう一度福田の肩を殴ると、顔を真赤にしながら叫んだ。
「自分でやったのっ!! お前とやりたかったからっ!!」
佐倉の予想外の言葉が福田の頭の中に反響する。自分の中に理解が浸透していくに連れ、愛おしさが溢れていく。
「なんでそんな可愛いんですか……」
「おい、にやにやすんな!」
「先輩……」
ベッドに行こう、と福田が佐倉の耳元で誘うと、佐倉はびっくりした顔で福田を見たあと小さくコクンと頷いた。
福田は足取りの危うい佐倉を担いで急ぎ足でベッドまで運ぶと、ベッドの上に放り投げた。ベッドのスプリングが耳障りな音を立て、佐倉が軽く跳ね上がる。
「おい!」と文句を言おうとする佐倉の上に福田は飛び込むようにのしかかった。
五秒間見つめ合ってからキスをして、三秒後には舌を絡めた。佐倉の甘い唾液を味わいながら、最後にはヂュッと吸いながら口を離す。
口で荒く呼吸をしながら佐倉が眉間にシワを寄せた顔で福田を見る。
「お前こそなんでこんなに上手いんだよ」
「まぁそれは……ねぇ?」
「お前こそ人のこと言えないじゃん」
「まぁこれからは先輩一筋なんで……」
佐倉の言葉を遮るように口づけを再開した。しばらく佐倉の甘い唇を堪能したあと、福田は佐倉の首筋に移動して、そのまま肩、鎖骨と下っていき、右側の乳首にたどり着く。
小さくプクリと勃ち上がる乳首を口に含み舌で舐めたり転がしたりしながら、反対側の乳首も左手で可愛がる。
「くすぐったい……」
そういってもじもじと足をすり合わせる佐倉に、福田は(ここは俺がゆっくり開発しよう)と心に決める。
「なぁ、もうそこはもういいから……」
もどかしい刺激に我慢ができなくなった佐倉が逃げようと身を捩る。福田は顔を上げるとベッドのヘッドボードから備え付けのコンドームを一つ取って自分のやる気で満ちた陰茎に被せた。そしてシャワーブースから持ってきたローションを自分の陰茎と手に出し、手に出したものを佐倉の孔後に塗りつけた。冷たさに佐倉の体がビクリと揺れる。
「後ろからのほうが楽って聞きましたけど、どっちがいいですか?」
福田の問に佐倉は少し迷ってから小さい声で「前」とつぶやく。
福田は佐倉の足を開かせるとその間に座り、佐倉の膝裏に手を入れると腰が持ち上がるほどにぐっと膝を押した。福田の目にシャワーブースでの行為で少し赤くなっている佐倉の孔後が映る。
「相変わらず体柔らかいですね」
「バカ! 離せ!」
焦ってジタバタする佐倉に「すみません」と笑いながら腕の力を緩めてやる。
福田は改めて座る位置を直すと自分の陰茎を佐倉の孔後にピタリと付ける。佐倉が息を呑む音が聞こえた。ついに念願のこのときがやってきた。
「入れますね」
福田の言葉に佐倉は目をギュッと閉じる。福田は構わず体を前に勧めた。
シャワーブースでの準備が功を奏し、佐倉の孔後はスムーズに福田を飲み込んでいく。
「ううぅ……」
「先輩、ほらちゃんと息吸って」
福田自身も佐倉の中の心地よさに暴発しないように深呼吸をしながら、起こしていた体を少し前に倒し伸ばした手で佐倉の頬に触れた。息も絶え絶えな佐倉が縋るように福田の手に頬を擦り寄せる。
その姿を愛おしく思いながら福田は再び体を前に進めた。そして福田の陰茎が全て佐倉の中に収まった。
「やばい、気持ち良すぎる……」
「……なぁ……全部入った……?」
「全部入りましたよ」
ほら、と福田は佐倉の手を取り自分達が繋がっているところへと導いた。佐倉はおずおずとそこに手を触れると、「ほんとだ……すごい」と小さく呟いた。
「先輩、動きますよ」
「わ、分かった」
佐倉はどうしらいいのかわからない様子で手と視線を彷徨わせていたので、福田はその手を取り佐倉の顔の横でベッドに押さえつけた。そして佐倉の様子を見ながらゆっくりと抽挿を始める。
「あっ、はぁ……あ……」
「はぁ……はぁ……」
二人の息遣いとローションの水っぽい音が部屋に響く。福田は徐々に抽挿を早めていった。
部屋に響く音に肌と肌がぶつかる音が加わる。佐倉の息遣いが次第に艶を帯びていく。佐倉が高まるに連れ、佐倉の穴がギュウギュウと福田の陰茎を締め付けていく。
「あっ……あん……あぁっ」
「先輩、もうやばいかも……」
福田はギリギリのところで耐えながら、佐倉の様子を伺う。佐倉の限界も近そうだ。
二人で頂点に向けて上り詰めていく。福田は少しでも多く佐倉を感じたくて、ほぼほぼ抱き合うように肌をくっつけた。
福田の耳元に佐倉の悲鳴のような喘ぎ声が響く。二人の体の間で汗と先走りにまみれた佐倉の陰茎が限界を迎えようとしていた。
「あっ、もぅ、だめっ……イク、イクッ、和也!」
「あっ、ぐっ……」
二人はほぼ同時に絶頂を迎えた。佐倉の体は僅かに弓形に反ると孔後がギュッと締まり福田の精液を絞り取るかのように蠕動する。福田は抗う術もなくビクビクと体を痙攣させながら全てを佐倉の体の中でぶちまけた。大きな快楽の波に攫われた福田は必死に佐倉にしがみつく。佐倉もまた混濁する意識の中、必死に福田に縋りついた。
二人はしばらく動けずにいたが、福田は呼吸が整ってくると緩慢な動きで体を離した。コンドームを押さえながらゆっくりと佐倉の体から陰茎を引き抜く。そして雑にコンドームを処分すると、佐倉の隣に倒れ込んだ。
「先輩……」
「……何」
「やばい……先輩のことが好き過ぎてやばい」
やばすぎる、と福田が一人悶えていると佐倉はハハッと声を上げて笑った。福田はその笑顔を見ながら、そういえば先輩はよくこうやって笑う人だったなと思い出した。すれ違いの間にできた二人の間の最後の壁がいつの間にかなくなっていた。
福田はそっと佐倉を抱きしめた。佐倉がまた笑い声を溢す。
「シャワー浴びたのに汗でベトベトだな」
「あとでシャワー浴びましょ。てか、なんですか最後の」
「何?」
「和也って」
あれは反則です、と福田が言うと佐倉は照れ臭そうにしながら「駄目なの?」と聞いてくる。
「ダメじゃないです。もっと呼んでください」
「福田」
「福田じゃなくて、和也!」
佐倉が楽しそうに笑う。福田もつられて笑顔になった。
しばらく二人で戯れていると佐倉が眠そうに欠伸をした。
「少し休んだら、シャワー浴びて、夕飯食べに行こう……」
「いいですね」
「何食べたいか考えといて」
それだけ言い残すと佐倉はすやすやと寝息を立て始めた。
福田は腕の中の愛おしい存在を確かめるように静かに腕に力を入れた。触れ合う肌から心地よい体温が伝わってくる。
福田が叶えられなかった告白を佐倉が諦めないていてくれたことに、福田は改めて心の中で感謝をした。二度とこの幸せを諦めたりしない。佐倉が頑張ってくれた以上の頑張りで、佐倉を幸せにすることを心に誓う。
起きたら佐倉と二人でどこに行こうか。
幸さに浸りながら、福田も静かに目を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!