第3章

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「君は僕が絶対に守る。だから不安に思うことなんか、何もないんだ」 「……聡志さん。でも、費用まで持ってもらうなんて」 「恋人だろう? だったら遠慮することもない」 「──え?」  今、聡志は何と言ったのだろう。自分たちが、恋人? 「何、その『え』は。まさか、ここまで付き合ってきて、そんなつもりはなかったなんて言わないよね?」 「え、あの、その」  そう言いたいのは聡志の方ではないのか。思っていることが、うまく口から出てこない。 「言っておくけど僕は、最初から恋人のつもりだったよ。君を初めて抱いた時から」  出会った日の夜が、抱きしめられていることによって鮮明に思い出されて、朝海の頬も全身も熱くなる。聡志は腕をほどき、また朝海の二の腕をつかんで顔をのぞき込んできた。 「だから君が何も言わずにいなくなってて、すごく落ち込んだよ。君はもう二度と会う気がないのかって──そんなことさせるかと思って、失礼な気はしたけど君のことを調べさせた」  少しだけバツの悪い顔をした聡志だが、すぐに表情を引き締める。 「君を見つけたって連絡があった時、どれだけ僕が安心したかわかる?」 「……どうして、そんなに」 「君を好きなのかって? そうだな、半分は一目惚れかな」 「えっ?」 「もしかして自覚ないの? 君はじゅうぶん美人だし、可愛いよ」  こんなにも「当たり前だろ」と言いたげな口調で、そんなことを言われた経験はない。  朝海が驚きと恥ずかしさで口ごもっていると、聡志はさらに続ける。 「あと半分は、一緒にいる間に知った君が、魅力的だったからだよ。信じてた男に裏切られても泣かずにいる強さ、自分の過ちをちゃんと認める潔さ。あと、食事を美味しそうに食べるところも好きだな」  意外なことを言われた後、そんなふうに付け加えられて「ええ?」と間の抜けた声が出てしまう。 「僕の周りには、お上品に少しだけ食べて、お上品な言葉で食べ残すご婦人が多かったからね。美味しい気持ちを素直に言葉に出して、きれいに食べきる君の姿は新鮮で、見ていて気持ちいいんだ」  あと、と意味深に微笑んで、聡志は唇を朝海の耳に寄せる。 「僕に抱かれて乱れてる朝海は、最高に可愛い」 「…………っ」  思わず後ずさろうとするが、聡志の腕はそれを許してくれなかった。三たび引き寄せられ、彼の胸に顔をうずめる格好になる。 「とにかく、今回の問題は僕に協力させてほしい。弁護士にいろいろ聞かれることにはなるだろうけど、僕も必ず同席するから心配しないで」 「……はい」  聡志がそう言ってくれるなら、きっと大丈夫になるだろう。温もりに身をゆだねながら朝海は思った。
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