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付き合うってなんですか?
そんなこんながあって、椿下さんと俺は、晴れてお付き合いをすることになった。で、一応彼氏として、なんと椿下さんの連絡先をゲットしたのだ。
椿下さんと付き合ったことは瞬く間に学年に広がった。
「あんな奴がなんで椿下さんと‥。」
「似合わない、早く別れて欲しい。」
祝福する声は少なく、俺は俺に対する悪口を聞くばかりだった。まあこうなることは百の承知だし、俺自身もなんで椿下さんと付き合えたのかわからない。真相を知っているのは「ゆーどーふ」君くらいだ。
それにしても、告白オッケーになって、連絡先を交換してから丸3日、実は椿下さんと全く一緒に帰ってもいなければ、会話や連絡すらすることをしていない。
もしかしてノリで付き合ってしまってしまって別れようかと悩んでいる、とかそんな感じなのかな。思いきって椿下さんに連絡を入れてみることにした。
「今日一緒に帰らない?」
アプリで連絡すると直ぐに返信が帰ってきた。
「オッケー。」
の下にはゆーどーふ君のスタンプ。
放課後二人は昇降口に集合した。
昇降口に立っている椿下さんは、俺を見かけると、ちょこんと俺の横に立ってきた。俺から椿下さんに声をかける。
「お疲れ。」
「お疲れ様。」
何やらしゃべりたそうな雰囲気を醸し出している椿下さんだったが、一言喋るとそのまま黙ってしまった。二人は家に向かって歩き始めた。俺と椿下さんは途中から家が別々の方向だから、椿下さんを家まで送って行くことにした。
そういえば俺はもちろん帰宅部なのはわかるが、椿下さんも部活動に入っていないのが意外だった。
「椿下さんも、部活動に入ってないんだね、意外だった。茶道〜とか花道〜とか、おしとやかなイメージがあったからさ。」
「そ、そうかな‥。」
また沈黙。
「・・・。どうかした?」
椿下さんは身長が160センチくらい、俺は170センチだから、話をするときはいつも椿下さんが俺を見上げる形になる。
「あの・・・。」
付き合って3日しか経ってないのに、別れ話か、そう心構えた。
そりゃあそうだ、周りも言ってる身分不相応。
隣に立っていることさえ恥ずかしく感じた。
悲しくなって言葉が出てこない。
「付き合うって、こんな感じて大丈夫なのかな。私、付き合ったことがなくて・・・。連絡、もっととった方がよかった、よね。」
急に泣きそうな瞳で俺のことを見上げた。俺はびっくりして拍子抜ける。
「え、あのー・・・。俺も連絡しようか迷ってたんだけど、なんか椿下さんに嫌われてるのかなーと思って、ちょっと躊躇しちゃった。」
ごめんね、と付け加える。
「だって、椿下さんてさ、すごく可愛いし、モテるから、ノリとかで俺となんかと付き合っちゃって後悔してるのかなと思って・・・。」
椿下さんが急に上げていた顔を背けてまた下を俯いた。
「モテるとか・・そういうのじゃなくて・・・。でも私、高校に入ってから一度も誰とも付き合ったこと、ないのに・・・。」
知らなかった。椿下さんが、誰とも付き合ったことがないなんて。
「どんな人と付き合えばいいかよく分からないし、好きってそれもよく分からないし、どんな人とでも付き合えっていいわけでもないだろうし・・・。」
俺は動揺が隠せなかった。ピュアなのか、彼女はピュアすぎるのか・・。
でも、
「でも、俺とは付き合ってくれたよね。あれは何で‥。」
「ゆーどーふ君。」
「え?」
「今日はもってないんだね。私、ゆーどーふ君のキャラがすごく好きなの。同じ物を好きな人とだったら、私もその人と仲良くなって、その人のこと好きになれるかなって。」
鞄からゆーどーふ君のキーチェーンを取り出して、鞄につけた。
「男がこんなゆるくて可愛い、ゆーどーふくん、付けてるの。変じゃないかな。」
「変じゃないよ!全然!!私も・・。」
椿下さんが鞄から携帯を取り出した。携帯にはゆーどーふくんのキーチェーンがついていた。ゆーどーふ君は間抜けな顔をしてみそ田学を食べている。
「お揃いだね。」
ピュアすぎるよ椿下さん。椿下さんの言葉が俺の恋心をくすぐった。
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