第二章 非日常の始まり

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目を覚ますと辺り一面が真っ黒で遠くにある小窓から微かな光が漏れ出ているような、そんな牢獄だった。 手首には魔法が込められた手錠、足には縄が強く縛りつけられていた。 この世界の魔法は王族しか使うことができず、王族以外の誰かが技を盗むこともできない。逆に言えば王族ならば絶対に魔法が遺伝される。 同じ国の王族は同じ技量の魔法を使うことができるが、国が違うと使える魔法の技量に差が出る。 どんな国にも取り柄はあるもので、ダジリア国は数多くの国の中で最も使える魔法の技量が高い国であった。 魔法は自然災害などの人の手には負えないものから国や国民を守るためのものであって、自国の兵を魔法の力で強くしたり何もないところから金を生み出したりするのは違反行為である。 巷ではダジリア国がその違反を犯していると噂になっていた。しかし魔法は目撃者か写真でもない限り証拠が残りにくいため、ダジリア国を問い詰めることができなかった。 (こうも簡単に魔法を使ってくるとは…手錠ぐらいならバレてもそこまで問い詰められないと思ったのか?) 状況はまさに絶望的。リードを人質にしてハングランド国に無条件降伏を求めるのか、またいつか戦争が起きた時にダジリア国が勝つ確率を上げるために殺すのか、一体どんな判断が下されるのか分からない。 (唯一分かるのは良い事は起こらないってことだけだな) いくら命の危機に瀕しているとしても狭い牢獄の中でできることはない。壁のシミや小さな穴を数えていたら遠くで扉が開く音がした。 看守がやってくるかと思ったらそこにいたのは身なりのいい少女だった。 色々な疑問が頭の中に思い浮かんで声が出ない。よって最初に口を開いたのは少女だった。 「あなたがハングランド国のとても強いイケメン騎士ですか?」 「……は?」 少女の口から出たとんでもない言葉に思わず聞き返してしまった。 「メイドが噂してたので。いくら敵国の騎士でもイケメンだったら別らしいです。」 あまり聞きたくなかったメイド事情に緊張がどこかへすっ飛んでしまったので遠慮なく少女に疑問を言う。 「お前は誰なんだ?ここは幼い女の子が来る場所じゃないだろうに。」 少女からの質問に「はい」とも「いいえ」とも言いたくなかったので、会話を続けたことからなんとなく察してほしい。
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