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「あらあら?お兄ちゃんが心配で家の前でうろうろしていたのは誰だっけ?」
「い、言わないでよ!おばさん!」
「お姉さん…よね?」
「お、おねえさん…」
彼女はこの村の村長の奥さん、ローラ。村長の奥さんなだけあって度胸も貫禄もある。
「今回の戦争も激戦だったんでしょ?お疲れ様!」
「うん、ありがとう」
「まあブラッディ・リードにとっては実は楽勝だったりするのかしら?」
そう。ブラッディ・リードというのはこの村に住んでいるまだ17歳の青年なのだ。
リードとカイトの両親はもういない。
父親が戦死、母親は栄養失調で病弱になり病死した。
両親がなくなったとき、村長とローラはリードとカイトを引き取ってここまで育てたのだ。
不幸中の幸いか、カイトは両親が亡くなった時まだ幼かったためほぼ両親のことは覚えていないらしい。
「まずはお兄ちゃんの怪我の手当てしないと!」
「そうね、じゃあ私はその間に勝利祝いの料理でも作ろうかしら。」
「じゃあお兄ちゃんこっち来て!」
カイトがリードの服を引っ張る。
「はいはい。そんなに急がなくても逃げないから。」
そう言いつつリードの顔は笑っている。
こういう顔を見ると戦場では恐ろしい騎士でも弟の前では優しいお兄ちゃんになってしまうんだなとローラは微笑ましく思った。
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