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「一樹にプロポーズされた」 「え、何、あんた達いつから付き合ってるの?」 岩盤浴でじっとりと汗をかきながら利恵と女子トーク。 二交代勤務のため、朝9時半頃帰宅したら、翌日の16時半まではフリーなのだ。 もちろん寝ていないため、帰ったら即就寝。 今日も17時まで寝て、同じく夜勤明けの利恵と24時間やっている温泉施設へとやってきた。 他の利用客がいなくなったのを見計らって、私は話を切り出した。 「付き合ってはいないんだけどね…」 「何それ…でも、あんたたち仲いいし、うまくやれそうだよね~…」 額から目のところまでタオルで覆った利恵が、口だけ動かしてそう言った。 「利恵、実は…私ね、学生の時、先輩と…祐司さんと…付き合ってたんだ…」 「ゆう…じ…?えぇっ!?」 大きな声をあげて、利恵は上体を勢いよく起こした。 それから、這うようにして私に近づいてきた。 タオルを口元にあてて「どういうこと?」と食い入るように私を見つめる。 「高校1年から6年…7年かな?」 「え…長い!…ってことは、あの学生時代の遠恋の相手が祐司さんってこと?」 「そう」 「まじ、ビックリ…え、じゃあ、この間…気まずかったんじゃない?」 「そうだよ、世間狭いって思ったよね。」 それから私は、昔のことをポツリポツリと思い出しながら利恵に話した。 利恵は興味津々で「それでそれで」と聞いてくる。 私たちは全身の毛穴という毛穴が開ききって、汗だくで苦しくなってきたので、休憩所へ移動し、並んだ椅子に腰を下ろした。 そして、常温のミネラルウォーターでのどを潤してからまた話し始めた。 「今思い返せば子供だったよね…余裕なくて…自分のことばっかりで…」 「わかるよー…あの頃は必死だったよね。」 「まぁ、あれがあったから今があるんだけど…」 「それで結局、何で別れちゃったんだっけ?」 「んー…」 何でなんだろう。別れの時の記憶は何だかぼやけてはっきりしない。 「疲れちゃってたのかな…色んなことがあったから…」 「あぁ、そういえば事故もあったしね…新入職員で松葉杖、目立ってたよー」 利恵は、含み笑いで松葉杖のジェスチャーをしてみせた。 交通事故。 私は車にひかれて、足を骨折したのだ。 国家試験日の帰りのことだった。
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