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赤いパトランプが近づいてきた。
パトカーは道路わきに停まり、きっちりと着込んだ制服に帽子を深くかぶった警官が2人降りてきた。
それに気づいて、私たちもそれぞれ車から降りる。
特段悪いことをしたわけでもないのに、パトカーやあの制服を見ると緊張するのは何故なのだろう。
パトカーを背に近づいてくる2人を眺めながら、そんなことを考えていた。
「通報された方はどちらですか。」
「あ、僕です。」
年長の警官が折戸に事故の状況を聴取し始めた。
もう1人の警官が私に近づいてきた。
「お怪我はありませんか?」
私は「大丈夫です。」と、背筋を伸ばし返答する。
「それでは、どういう状況だったか教えていただけますか。」
すらりと長身の若めの警官が帽子をクイっとあげて、私を見て軽く会釈をした。
ーーー あ。
視線が合って、時間が止まった。
いや、止まるわけはないのだが、おそらくほんの刹那。
確実に止まったと思う。
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