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「浩司兄ちゃん、耳元で喋らないで。近いって」
「龍の耳がビンカンなことくらい、わかってるからやってるんだよ。だっておしおきなんだからさ」
喉の奥でくつくつ笑う浩司兄ちゃんの声が、なんだか腹立たしく聞こえた。
「う~~~っ……」
「あんなヤツのために嘘をつくから、こんなことになる。自業自得、ふーっ」
耳の穴にダイレクトに吐息をかけられたせいで、否応なしにゾクゾクしたものを、背筋にそって全身に感じた。
「ンンっ!」
「龍がアイツに変な優しさをかけて、俺を嫉妬させた罰は、こんなものじゃまだまだ」
浩司兄ちゃんのぬめりのある舌の先端が、僕の耳の縁をなぞった。耳の形を確かめるようにやんわり舐めてから、柔らかい耳朶をぱくっと口に含む。浩司兄ちゃんの口内のあたたかみを、直に感じるだけじゃなく――。
「ぁあっ、も、やめっ!」
顔をそむけかけた僕の動きを、浩司兄ちゃんの大きな手が頭を抱えることで、がっちり固定させられる。
「ダメだ。ちゃんと罰を受けろ、龍」
口に含んだ耳朶をリズミカルに吸い続ける行為をやめさせるべく、僕は大きな声を出す。
「ごめんなさい、もう浩司兄ちゃんに嘘をつかないよ。お願い、こんなことやめて……」
「まったく!」
泣き出しそうな口調で懇願したら、耳朶を解放した浩司兄ちゃんが静かに問いかける。声の感じで、僕の目の前に移動したのが、なんとなくわかった。
「龍、本当に嘘つかない?」
浩司兄ちゃんの両手が、優しく頬を包み込む。真実を言うかどうか、僕の顔をじっと見ているのかもしれない。
「つかない、誓うよ」
「じゃあ嘘をついたその舌を罰してから、許してあげる。舌を出してごらん」
舌を罰するというセリフに一抹の不安を覚えたが、言われたとおりに、唇の隙間から舌を覗かせた。
「俺に見えるように、ちゃんと舌を出して。そう、全部だ」
両手をあげたまま、浩司兄ちゃんに向かって、あっかんべーをするこのポーズは、傍から見たらバカっぽいと思われる。だからこの格好をさせたのだろうか?
頬に触れる浩司兄ちゃんの手に力が入り、首をぐいっと上向かせられる。やがて僕の舌があたたかいものに包まれた。
「ひぁっ」
浩司兄ちゃんとのディープキスは、これがはじめてじゃない。中二のあのときにもしたのだけれど、それとはまた違った動きで僕を感じさせる。
「やぁっ、あっ…んあっ……ぁあっ」
まるで僕に快感を覚えさせるように、僕の舌が浩司兄ちゃんの口の中を行ったり来たりした。浩司兄ちゃんが唇に力を入れながら、僕の舌をちゅーっと吸いあげつつ、口内に忍ばせたと思ったら、勢いよく解放するを繰り返す。
単調な動きで罰を与え続けると思った矢先に、浩司兄ちゃんの肉厚な舌が僕の舌に絡んだり、僕の唇ごと舌を食んだりするせいで、唾液がものすごく口の中に溢れた。
「あ……っは…ぁ、ん……」
互いの唾液が混ざり合い、室内に淫靡な感じで水音が響く。浩司兄ちゃんが僕にしている、スローテンポなその動きはまるで――。
それを考えついた瞬間、頬がぶわっと熱を持ち、赤くなったのがわかった。
「龍に目隠しをしている布が白いせいか、頬が真っ赤になっているのがわかったけど、どうしたんだい?」
「えっ……、あ、うんと」
「俺の与える罰に、龍が感じているのは見てわかってる。だって、ね――」
浩司兄ちゃんは僕の腰を抱き寄せるなり、硬いなにかを下半身に強く押し当てる。僕自身が同じような硬さになっているせいで、それがナニかすぐに理解したものの、恥ずかしくて口にできない。
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