あいつが居た

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あいつが居た

帰国して親父の会社で仕事を始めた、これまでも同じような仕事をしてきた俺に取って職場が変わっただけで特に支障を感じることなく仕事はできた・・・・・だがプライベートはそうはいかない。 恋人と言える人が欲しいわけではないが成人男子としての欲求は満たしたい。 そんなとき留学先で知り合った桐田祐と言う男から連絡が来た、4年間同じ大学で同じゲイだと言って親しくなった男だったよく気の付くいい奴で、何度か寝たこともあったが恋愛感情はおきなかった。 卒業してすぐに帰国していた桐田は俺が帰国したのを知って連絡をしてきた。 仕事が終わって待ち合わせの場所に行くと、桐田は俺が来るのを待っていた。 「やぁー久しぶり、帰国したんだ」 「久しぶりだな元気?」 「こっちへは帰らないって言ってなかったか?」 「そのつもりだったんだけど・・・・・事情が変わっちまって」 「そうか、また逢えて嬉しいよ」 「俺も・・・・」 久しぶりに二人で食事をして彼の行きつけの店に行った。 そこはいわゆるそれ系の男がその夜限りの相手を探すバーだった、桐田はすぐに相手を見つけて店を出た、 残された俺はカウンターに座って誰かが声をかけるのを待った‥…あいつの事が好きだと思いながら、肉欲の為に一夜限りの相手を探す浅ましい自分・・・・・ 暫くして背の高い男が声を掛けて来た、あいつにどことなく似ていた・・・・・ 「お一人ですか?」 「はい」 「よかったらご一緒しても?」 「ええ」 「この店は始めてですか?」 「そうです、あなたは?」 「わたしはよく来てます、週2ぐらい」 「いい店ですね、気に入りました」 「それはよかった」 「出ましょうか?」 「そうですね」 俺たちは店を後にした、男の後をついて行くとホテル街と思われる場所へ出た。 いくつかのホテルの中で男は目指すホテルへ入って行った、慣れた感じで部屋を選び奥へと進む。 部屋の前に来た時奥の部屋の前に男女が立っているのが見えた、こんなホテルで客同士が顔を合わせることなど有り得ない。 おそらく週末で客が多くてこんなアクシデントになったのだろうと気楽に考えていた。 部屋のドアの前に立つ男がドアに近づいた時ドアの上のライトが点灯した、その灯りに浮かび上がった横顔を見た瞬間、俺の身体が震えた。 あいつだった・・・・・・あの横顔俺の好きなあいつの顔、たとえ何年たとうと忘れたことのないあいつの顔。 幸い向こうはこっちを見ていなかった、俺は思った以上の衝撃と胸に迫る悲しみを感じていた。 これまであいつが女子と付き合うのは何度も見ていた、だがそれ以上の事は想像でしかなかった。 ホテルの部屋へ入るあいつ、女の肩を抱いてもたれるように女が頭を肩に乗せていた、ホテルに来ているという事はそうゆう事のために来ているのだと、わかっていても見たくなかった。 自分の事は棚に上げてあいつが女とホテルに来ていた事がショックだった。 男に背中を押されて部屋へ入る・・・・・衝撃が大きすぎてその気がなくなっていたが今更それを言えるはずがない。 風呂に入り男の舐めまわす舌で次第に興奮する自分がいた、今頃あいつは女に同じようなしているのだろうか? そんなことばかりを考えてしまう、男の物を口に咥えて激しく扱くと男はすぐに射精した。 男の言うままに腰を上げ尻を突きだす、男の物が俺の中で蠢くように突き上げる・・・・・・頭と身体は別物だ、俺はすぐに絶頂へと登っていった。 シャワーを浴びて外へ出る、男と別れてタクシーに乗った。 女と絡むあいつの姿を想像する・・・・・あいつはどんな風に女を抱くのだろう・・・・・ あの手で指で舌で女を愛撫するあいつ・・・・・考えただけで胸が苦しくなって吐き気がした。 あいつはもう俺の手の届かないところへ行ってしまった、自分で離れておきながらそう思った。 腕に着けたブレスレットを指でなぞった。
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