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俺の中のあいつ
食事を終えて外へ出てもお互い帰ろうと言う言葉が出てこない、帰りたくないような別れたくないようなもっと一緒にいたいと思った。
こんな時どうしたらいいのか、俺たちは二人ともこれまでまともな恋愛をしていないことに気が付いた。
その日の相手を探して溜まった欲を吐き出す行為しかしていない、好きだとか愛してるとかの感情の無い行為ばかりだった。
胸の中に好きな人を隠したままずっとその相手を意識しないように自分を誤魔化してきた。
手首に着けたブレスレットだけが今までずっと変わらずその場所にあった、それが唯一の自分にとっても真実のように外す事も捨てることも出来ずにいた。
2人並んで歩きながら、そう言えば高校時代もこうやって2人で学校の帰りに家まで歩いたことを思いだした。
あの頃お互い好きな気持ちを隠して友達の振りをしていたのかと思えば胸がいっぱいになって、すぐそばにある手を掴んでいた。
手をつないだのも触ったのも始めてだった、好きな人と手をつなぐ・・・・・握り合った手が汗ばんでくるのがわかった。
それでも離したくなかった、初恋と言っていい始めて恋い焦がれた相手だった。
「柊吾どうする?」
「お前も明日休み?」
「うん、おれんち来る?」
「吏、俺・・・・・今までしてきたことなんだけど、お前の気持ち知らなかったしまさかお前と同じ気持ちだなんて思ってもいなかったから・・・・・これまでの事目をつぶってくれる?」
「柊吾!俺だって同じことしてたし、柊吾のへの気持ちは全く別だからそれは柊吾だってそうだろ?」
「うん・・・・・お前とは真剣に付き合っていきたい、これからもずっと」
「勿論そのつもり、遅くなったけど柊吾俺と付き合ってくれ」
「ありがとう、これからはお前以外の人と逢うことはないし、そうゆう事もしない」
「わかってる・・・・おれも」
真剣な顔で告白をされて、それが妙に嬉しくて胸がいっぱいになる・・・・・こうなるなんて思ってもいなかったけど、こうなりたいとずっと思っていた。
こいつに好きだと思ってほしい、一緒にいたいと思われたいと・・・・・それが俺の唯一の願いだった。
あいつのマンションまで1時間ぐらい歩いた、人の多い電車に乗りたくなくて二人っきりで歩きたくて、時間など気にならなかった。
あいつのマンションは思った通り綺麗にかたずいて余計なものを置かない彼らしいシンプルな部屋だった。
これまでいつも感じていたこいつのイメージが間違っていなかったことが嬉しかった、そうゆうやつだった・・・・・制服も綺麗に着ていたしカバンも靴も少しも汚れていたことがなかった。
近寄りがたいと言う奴もいたけど、俺に取ってはそれが普通だった。
俺のガサツな所を嫌っていると思っていた時、それがお前だって言われたとき自分を認めてもらえた嬉しさで胸がドキドキしたことがあった。
ソファーに隣り合って座る、どちらからともなく向き合って見つめ合う・・・・・・相手の瞳に写る自分。
どちらからともなく顔を近づけて目を閉じた、そっと柔らかな感触が唇に触れる・・・・・・生まれて初めての口づけ。
少しだけ口を開けるとそこから吏の舌が侵入して、俺の舌と絡み合う。
唇を吸って舌を絡めてこぼれた唾液を指で掬う・・・・・・熱い息が口の中に入ってきて更に熱くなる。
頬に手を添えて唇を離してまた見つめ合う・・・・・俺を見る目が優しい、うっすらとほほ笑む顔はいつもよりずっと綺麗だった。
俺は小さな声で名前を呼んだ。
「吏」
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