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実はできる男からの含蓄ある名言を期待し始めていた私は、ガックリと肩を落とす。
「どうして人は人を形容したがるのか。それはきっと、相手を掌握したという安心感を得たいからだ。」
右近さんが突然会話に加わり、名言めいたことを言った。
「誰の言葉ですか?」
部長越しに訊ねると
「俺の言葉。」
と言われて、またガックリと肩を落とした。
「いい言葉だねぇ。」
部長がのんびりと言いながら、両手を後ろについた。ポヨン腹がこれ見よがしにポヨンと突き出る。右近さんがそれをジッと見つめた後、おもむろにポヨポヨと触りだす。
「右近さん!ちょっと、右近さん!?」
驚いて声を掛けるけれど、部長は気にせず腹を触らせたまま海を眺め、右近さんは無言でポヨン腹をドリブルしている。
「ちょっと、2人とも!」
注意しても2人は意に介さず
「これ、背中まで波打ってませんか?」
「やっぱり海風面白いねぇ。」
「どこまで揺れてます?ケツも?」
「あ、あの鳥、一気に高く上がったよ。海風すごいなぁ。」
と全く嚙み合っていない会話を繰り広げる。
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