部長の実態2 ~磯谷部長編~

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「難しいこと言いますね。」  真顔で右近さんを見つめると、右近さんの横顔の口元が緩んでいるのに気づいた。なかなかに不気味なその笑顔にゾクリとしてしまう。 「右近さん?」 「ほーら、ほら。届かないだろー。」  足元まで伸びては、右近さんの足の先スレスレで止まり、引き返していく波を、ニヤニヤとしながら小さな声でおちょくっている。 「ほらまた。やーい。」 「右近さん。」 「邪魔しないで。」 「いや、あのですね、」 「悔しいだろー。あはは。」 「怖いですよ。やめてください。」 「なんで?楽しんでるんだけど。」 「それが楽しいと思ってるのが怖いんですよ。」 「やーい。また届かないでやんの。」 「右近さん、無視しないで。右近さんのために言ってます。」 「あは、今いけると思っただろ?ムリだよーん。」 「右近さん!海をおちょくってはいけない!祟られますよ!」  右近さんがやっと私の方を向き、長くてバサバサな前髪の隙間から私を見つめる。 「祟りが怖くて止めてたの?」 「いえ、右近さんの一人遊びが怖くて止めてました。」 「良かった。祟りなんて本気で信じてる大人、怖いもん。」 「あなたみたいな大人に言われたくない。」
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