~memory No.3 人間の子

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~memory No.3 人間の子

名前をどうやら覚えていないこの子は、恐らく人間で言う男の子と言うモノだろう。 人間には、性別という物があってそれで区別されているらしい。 「なるほど…じゃあ、僕達で決めても大丈夫?」 「……おにいさんたち…だれ?」 「僕たちは、この建物に住んでいるんだ。」 「僕は、白銀、よろしくね」 「僕は、雹兎、よろしく」 「ぼくの おかあさんとおとうさんは、どこにいったの?」 「お母さんとお父さんは、分からないなぁ…」 「もしかしたら、もっと遠くにいるのかもよ」 「……あいたい…」 泣きそうな顔をする少年にあたふたする白銀。 これは、どうすればいいのか分からない。 「大丈夫、会えるよ、僕達が連れてってあげるから!」 「でも、すぐには会えないけど、我慢出来るよね?」 と、言うと少年は、少し喜んで 頷いた。 「お母さんとお父さんは、どこに住んでいたの?」 「えっとね……」 「あ、地図持ってくる」 僕は戸棚から地図を持ってきて机に置いた。 そして、少年を椅子に座らせて地図を見せた。 「ここ……」 少年が指した場所は…… 「!?」 「ここって…」 AIの侵略がもっとも多いこの世界の都市【ビオリムシティー】だったのだ。 「ビオリムシティーか……」 「これは、困ったな」 「…やっぱり、むり…なの?」 少年は、悲しそうな顔をして僕達を見つめた。 「ううん、無理じゃないよ、必ず連れてってあげるから!」 白銀は、少年を励ますように言った。 それにしても、ビオリムシティーか、ここからは、一番遠い。 何より、道中でAIに会うことも考えるとやはり、難しい。 だからと言って、このまま少年をここにいさせるのも、彼のためにならない。 「少年、ここに行くには、何日間も経ってしまうけど平気か?」 と、僕は地図から視線を少年にずらして聞いた。 「そんなに…かかるの?」 「正確には、何日かは分からないけど、行くことは出来るよ」 白銀は、一応ね、と苦笑した。 「………」 やはり、無理だろうかと、少年は黙った。 しかし、少ししてから口を開いた。 「それでもいいよ、ぼくは、おかあさんとおとうさんにあいたいから」 「!」 「!」 人間とは、やはり面白いものだ。 そこまでして、会いたいなんてことは、僕らには無いのだけど。 「じゃあ、1週間後、出発ってことでいい?」 「うん…」 少年は、力強く頷いた。 ー数分後、僕は考え事をすると言って部屋に入った。 白銀に、少年の世話をするように頼んだ。 「はくぎんおにいさんは、ひとじゃないの?」 「どうして分かったんだい?」 「だって、みためがちがうもん…」 見た目が違うと言われて少しショックを受ける白銀。 これでも人間に近づけたつもりなのだが。 「そうだね…僕は、狼だからねっ!」 と、威張って言うと、少年は目を輝かせた。 「おおかみなの?カッコいいなぁ…」 そこまで素直にカッコいいと言われたのは、初めてだから、少し照れてしまう。 「はくとおにいさんは?」 「はっくんはねぇ…ゾンビだね!」 「ぞんびって…こわい」 はは、はっくん、怖いって言われてるよ。 まぁ、それが普通なんだけどね。 「でも、凄く優しいんだよ」 「…たべられちゃったりしないの?」 「うん!しないよ!」 「はっくんは、人を傷つける事が大嫌いだから」
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