3 ドキドキ、宝さがしゲーム☆

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「や、めて……そうちゃ、……っ!」 「無理だよ、止めるなんて無理。どんなに言っても言い足りない……ねぇ、なんでオレってあんたの事、こんなに好きなんだろ?」 「知らない、よっ」 「あぁでも、ダメだね、この感じは……ごめん、抑えるから……暫くこうさせて」  キスの嵐が唇に届きそうになった所で、ようやく颯珠は止まりその手に力強く抱きしめられた。けれども絡みつく腕は苦しくはなくて、震えているのを感じながら琥陽も恐る恐る手を回す。 「これ……体質、なんだ」 「体質?」 「そう。俺たちの家はアルファの家系だけど、オメガが生まれたら変な体質になるらしくて……俺の場合は、これ。夜になると、子供の姿になる」 「子供……」 「そう。今日は……中二、くらいかな? 声はあんまり変わってないし、颯ちゃんと同じくらいの身長だったらそれくらいかも」 「今から二年前の琥陽……」  バレてしまっては仕方がないと説明するが、やはり颯珠の反応はどこかズレている。  この姿を知っているのは家族以外だと一朔くらいで、普通の反応というのもあまり知らない。だが、これが普通ではないことくらい分かっていた。  これを知れば驚くか、気味悪がるか、気遣わしげな視線に晒されるか……想像していた反応とかけ離れた颯珠の反応に、躊躇いながらも琥陽は背中をポンと叩いた。 「ありがとう」 「……なんで感謝?」 「だって、まさか颯ちゃんがこんな反応するとは思わなくて……変だって、自分でも思ってたから。ありがとう」  この姿を見せても嫌な感情を抱いている様子のない颯珠に感謝の気持ちを言葉に乗せると、なぜか「はぁ」とため息を吐かれた。 「琥陽は何も、わかってない」  そしてそう言うと、ぐいっとシャツを掴まれ顔が間近に迫る。 「こんなかわいい姿、三谷も知ってるの?」 「一朔? 知ってるけど」 「……オレだけが知ってたかったな」  耳の下をさわさわと撫でられると、妖艶な声が耳元に落とされる。慌てて飛びのくと、クスリと颯珠は笑い、顎に人差し指を当てた。 「まさかその顔は、知らないだろうね?」 「どど、どんな顔っ?」 「オメガだって、一目でわかるような顔」  肉食獣が、狙った獲物を前にしたように舌でぺろりと唇を舐める。その仕草があまりにも艶めかしくて、ごくりと琥陽は息を呑んだ。 「琥陽は、この姿を隠して夜に部屋を出てたんだよね?」 「そ、そうだけど」 「ならこれからは、部屋を出る必要はないね?」 「い、いやっ、今まで通り俺は別室で――」 「許すわけないでしょ、そんな事」  鋭く睨まれ、それ以上何も言えなくなった。  目線が正面にあると、颯珠の凄みに逆らえない。二十センチは高い位置にある時でも逆らえないのだ、その真っ直ぐな瞳にとらわれて、継ぐ言葉が霧散する。 「今夜は一緒に寝ようね、琥陽」 「……ハイ」  まるでロボットのように思考を手放した琥陽は、気が付いたらそう口にしていた。
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