4 颯珠の弱さ

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「嫌、だった?」 「え?」 「オレとのキス、嫌だった?」 「……嫌、では、なかったけど」  昼休みを思い出し首を傾げる。  いきなりで驚いたが、嫌ではなかった。  颯珠とのキスは一瞬で、感想を言えるほど長くはなくて。良く分からなくて虚空を見つめていると、身体をくるりと回転させられ、颯珠と向かい合わせで座らされた。 「キスってさ、オレも特別だと思ってるんだよね。恋人同士の特権、みたいな。そう思ってなければ今頃、オレは琥陽にキス、しまくってたと思うよ?」 「……同意のない行為は、校則で禁じられてるけど」 「実際はしてないでしょ? まぁ妄想ではしてきたけど」 「そ、想像してたの!?」 「当たり前でしょ? 好きな人とのそういう行為、想像しないなんてあり得ないよ」  唇を親指でツンツンといじられながら、琥陽は直球な言葉に慌てふためく。  嫌わない、の言葉に安心したのだろうか。調子を取り戻してきた颯珠にペースを乱されつつ、琥陽はやめてもらおうと腕を掴んだ。 「嫌じゃなかったなら、さ」 「?」 「もう一回、しても良い? やり直させてよ」  指が首の後ろに回り、顔を上げさせられる。  穏やかでいながら熱を秘めている瞳は、今にもその熱が揺らいでしまいそうだった。  それでも熱を抑え反応を伺っている颯珠に、琥陽は懸命に作った笑みを浮かべる。 「ダメに決まってるでしょ? 本当の恋人になる事なんて、ないんだから――むっ」  はっきりと拒むと、口のすれすれの場所に唇を落とされた。 「分かった。いつもの姿に戻ってから、ね」 「そ、そういう事じゃなくて!」 「琥陽の唇、予約しとくから。誰にも奪われたらダメだからね」 「だ、だから俺は、番がいるって……!」 「そんな事実、いつか消し去ってオレのものにするから。覚悟、しときなよ」  名残惜しそうに唇を見つめていた颯珠は、暫くすると漸く離してくれた。  だが離れても、琥陽の身体は動いてくれそうになくて。 「~~~~っ」  恨みがましく見つめたら、何を思ったのか今度は瞼に唇を落とされた。
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