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4.5 《洸希×碧海》 程よい関係
琥陽と別れた碧海は、教室に戻る振りをして屋上へと向かった。
朝から教室にいなかったあいつは、きっとここにいるはずだ。
予測ではなく確信をもって開いた扉の先には、思っていた通り寮の同室でありペアの相手である井草洸希が給水塔の影で居眠りをしていた。
そっと近づき、頬をツンと指でつつく。
「……なん、だ?」
迷惑そうに眉間に皺を寄せながらも瞼を開けた洸希に、碧海は上から覆いかぶさった。
「またか?」
「うん。お願い……慰めて?」
先ほど整えた衣服に手を掛けはだけさせると、洸希のベルトを外しにかかる。
「そのままでいいよ、勝手にやるから」
起きたばかりで反応の悪いそこに触れながら、碧海は脱いだ服を側に置いた。
ペアとしてこの学校に入学して以来、洸希とはほとんど会話がない。
物静か、というよりは会話自体が面倒臭いようだ。必要最低限しか話さず、部屋では沈黙が続く。
そんな洸希と関わるのはこうして身体を重ねる時だけだ。
誰かと肌を重ねて虚しさが増した時、もしくは今日のように辛かった時。
慰めてもらうだけの、身体だけの関係。
お互いの事は何も知らないのに、気持ち良くなれる所は知っている、それだけの関係。
「待て、そのまま入れる気か?」
「そうだけど?」
「あんまり慣らしてないだろうが」
「な、に……ひゃっ」
そのまま腰を下ろそうとしていた所に指が侵入してきて、乱雑にかき回された。
いきなり入ってきた節くれだった指は自分では届かなかったところにも刺激を繰り返し、やめさせようと腕を掴むも力が入らなくて、碧海はぐったりとされるがままになる。
「これで良い、あとは好きにしろ」
早くしたいというこちらの気持ちそっちのけでぐちゃぐちゃにされて、キッと鋭く洸希を睨みつけた。
「ほんと、そういう所……っ」
タチが悪い、と続く言葉を飲み込んだ。
中途半端に優しさを振りまいて、でも期待はしないでくれと言わんばかりに突き放して。
何かに突き動かされる気配のない洸希に、今日も碧海は感情を切り捨て行為を続行させた。
こんな相手に何を思っていても無駄なだけだ。自分たちは、ただ利用しされているだけの関係。
それで良いし、それが心地良い。
でも時々、羨ましくなる。
感情のある関係、好き合うという関係性にいる友達の事を。
(そういう相手が、僕にもいつか――)
淡い願いを胸に秘め、碧海は今度こそ腰を下ろした。
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