2 バレてました

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 琥陽は今朝のように、オメガであろう生徒からアプローチされることが多くあった。  常にニコニコと人当たりが良いからか、本気ではなくマスコット的な扱いを受ける事もあり、本気の人はやんわりと断っている。  今朝のだって、手紙を見て内容を把握した上できちんと断っていたはずだ。  ただタイミングが悪かった。  颯珠がその場にいたために、酷い目に遭ってしまった。 「大丈夫か、琥陽」 「一朔!」  幼馴染でありながらこの学園に入学し無事クラスメイトとなった一朔が、眉根を限界まで下げる琥陽に心配そうに声をかける。  手には牛乳パックを持っており、パックからゴッと音が漏れた。 「颯ちゃんが……」 「ああ分かった、言いたいことは分かるからとりあえずそんな目で見んな。お前の相方がすげぇ睨んでるから」  教室で、皆に注目されているというのに堂々と琥陽の膝の上に座る颯珠に目をやり、呆れた口調で一朔が頭を抱える。  恥ずかしい思い、という颯珠の言葉通り、酷い目に遭った。  朝から異様にくっついてくるし、抱き着いてくるし、手を繋ごうとする。  過剰なスキンシップに周りも苦笑いで、こちらとしても心臓が持たないからそろそろやめてもらいたい。 「琥陽が悪いんだよ、ボクに寂しい思いさせるから」 「だそうだが、弁明は?」 「……一朔は、誰の味方なの?」 「この場合お前の味方じゃない方が安全だっつーことくらい、誰でも分かるわな」  容易く見捨てた幼馴染にジト目を送り、琥陽はため息を抑え颯珠のお腹に手を回した。 「俺には、颯ちゃんだけだよ。だからこんな事、しなくていいんだよ?」  恥ずかしさを堪え、ポンポンと宥めるようにお腹を叩く。  人の目がある以上、こうでもしないと颯珠は納得してくれない。  拗ねた颯珠は額にトントンと指をさし、仕方なく琥陽はそこに唇を落とし「機嫌、直して?」と言うと、漸く頬を綻ばせた。 「琥陽、大好き」  しがみついたままそう言い、頭を擦り付ける颯珠に、琥陽はホッと息を漏らした。  昼休みに一旦落ち着いたように思えた颯珠のストーキングは、午後まで続けられた。  一日だけだから、と甘えるように言われ、過剰なスキンシップに琥陽は耐えた。  授業中、見えないように手を繋がれた時も、冗談交じりに頬にキスされた時も、正面から抱き着かれた時も。  その度に顔を赤らめながらも耐えて耐えて一日をやり過ごし、漸く迎えた寮での時間。 「どこ行くの?」  寂しそうに後ろから抱き着いてくる颯珠に、また琥陽は困ったような声を上げた。
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