ある転生ヒロインの末路

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ぼんやりとした意識の中、これまでの人生を振り返る。 自分に前世の記憶があると思い出したのは、王立学園に入学する時だった。 門の前に立ち、学園の校舎を見上げた時、ここが前世でプレイしていた乙女ゲームの世界だと気が付いた。 そして、自分がそのゲームのヒロインだと言うことも。 この時は天にも登る気持ちだったのを今でも覚えている。 何人かいる攻略対象の中でも、前世の私の一番の推しはメイン攻略対象でもある王太子殿下だった。 ゲームのように進めて行けば、ただの田舎の男爵令嬢に過ぎなかった私が、王太子妃になれるかもしれない。 それは、前世では冴えないOLに過ぎず、今世でもせめてどこか爵位のある家に嫁ぐことさえ出来ればそれでいいと思っていた私にとっては夢のような事だった。 入学してからは、ゲームのシナリオをなぞるように行動した。 その結果、王太子殿下は簡単に婚約者であり、ゲームの悪役令嬢でもある公爵令嬢から私に乗り換えた。 有力家門の子息である他の攻略対象達とも友好的な関係を築けた。 悪役令嬢からの嫌がらせは、社会人として生きてきた私からしてみれば可愛いと思えるレベルのものでしかなかったので、正直全然ダメージはなかった。 と言うか、彼女からは貴族令嬢として考えれば至極当たり前の、まっとうな事しか言われなかった。 嫌がらせの実行犯は明らかに別の令嬢達だったし。 しかし、全てを悪役令嬢のせいという事にして大袈裟に被害を訴えることで、王太子殿下はますます悪役令嬢を遠ざけ、私に愛を注いでくれた。 結果として、悪役令嬢は婚約を破棄され、国外追放となった。 実際にやられた事を考えると、その罰は重すぎるんじゃないかと思わないでもなかったが、それがゲームのシナリオなのだから仕方ないかとしかその時は思わなかった。 そうして王太子殿下の新たな婚約者となった私は、学園を卒業すると同時に王太子妃となった。 夢にまで見た生活が自分を待っている。 これから先の私の未来は、光り輝いた素晴らしいものになる。 その時の私は、それを信じて疑っていなかった。
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