あるバイセクシュアルの女の述懐

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 私は女で、バイセクシュアルだ。男女ともに性愛の対象となる。そうでありながら女性と一度も交わらぬまま、男性と結婚した。  凛々(りり)しい女性が好きだった。ガリガリに痩せて失望を知っていて、時々自嘲する女性がたまらなく好きだった。  ストレートデニムと黒のミュールが恐ろしいほど似合っていたあの女性(ひと)は当時、高校生だった。私がまだ中一の時だ。  年下の女性を好きになることはなかった。殆どが年上で、同い年の女性に恋をしたのが二度。同い年だった一人はそれ程痩せていなかった。柔らかいほっぺたに両手をあてて笑い合ったのが懐かしい。  女性と恋愛関係になるのは男性のそれと比べ、大変難しい。まず相手から恋愛対象と見做(みな)されていない。初対面から異性として意識し合える、男性と関係を結ぶハードルを考えると段違いだ。  女性だけが対象となるレズビアンであれば、覚悟を決めて女性に想いを打ち明けたかもしれない。しかし幸か不幸か私は男性も愛したし、男性に対しても充分に欲情した。そして男性との愛の成就は比較的容易いものだったから、自然とそちらを選んだ。求められるとは本当にありがたいことだと思う。  だから私はバイセクシュアルを自認しながらも一度も女性と交際したことがないし、性交したこともない。  
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