25人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
沈黙しかない真夜中の暗闇に響く時計の針の音のように、コツコツ…と、冷たく無慈悲な足音が床を打つ。
硬い床に響く、冷たい足音。
まさに殺人鬼が立てるであろうお手本のような、力強く迷いのないその足音が…段々と俺が隠れている方へと近づいてくるのだった。
静かなフロアの中に聞こえてくるのは、フリーザーなどのいくつもの電子機器がたてるブーンというような微かな起動音以外には、殺人鬼的足音と、バクバクと耳元に響いてくる俺の心臓の音くらいだ。
俺がここに隠れていることがバレないよう、物音をたてないように、必死に息をおさえているというのに、俺の耳には俺自身の心臓音がヤバいほど聞こえる、ど…どうしよう!!
今の俺のこの状況…これはマジでよくあるホラー映画のワンシーンだった。
俺以外には誰もいない部屋、殺人鬼と思しきヤベー奴に追い詰められ、逃げ場もなく、ただ物陰に隠れて息を潜めている。
俺という存在が隠れていることに気づかず、そのまま殺人鬼に去っていって欲しいと願いながら。
なのに…なのにっ!
殺人鬼の足音は、着実に…俺が陰に隠れている大型フリーザーの方へと近づいてきているのだ!!
えっ、マジ、ちょ、よりによってこっち来んなよ!
どうしよう、俺がここにいるってバレたらどうなんの? 次の被害者は俺的なカンジ? 俺も…次の神隠しのターゲットにされちゃう的な?
いやいや…なに考えてんだ、神隠しなんて現実的じゃないだろ、これは単純に人間の…殺人鬼による犯罪で…だから最悪ここに俺が隠れているのが見つかった場合は…顔を見られた口封じとして殺される、ってパターンじゃないの!?
ううっ…これはバトルか? 殺人鬼と戦うしかないのか?
俺だっておめおめと一方的に殺されたりなんかしないぞ、もういっそのこと、見つかる前にこっちから飛び出していって攻撃をしかけるとか?
でも俺、武器とかなんも持ってないよ、真の手ぶら、スマホすら今は持ってない、マジなんも持ってない、だけど殺人鬼の方は武器を持ってるかもしれない、棍棒(?)とかナイフとか…やばい勝てる気しない…。
足音に耳をすまし、息を殺して物陰に体を縮こませながら、俺はひとり色々なことをグルグルと考え続ける。
でも、考えることすべてが死亡フラグにしか繋がらない気がして、ストレスMAXな俺の思考はついにパーンと崩壊してしまう。
ああぁーーーーもぉぉぉぉぉーーーー!! こんなときこそ早く助けにきてくださいよ犬彦さぁぁぁぁーーんんッ!!!
最初のコメントを投稿しよう!