開場

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サクロヴィーシェバレエ団。 ロシアの名門バレエ団であるロシア・ローザバレエ団から独立したダンサーたちによって作られた新しいバレエ団だ。 今日はその記念すべき旗揚げ公演の初日だった。 初日を祝うたくさんのスタンドフラワーの中に、申し訳なさそうに立つ小さなフラワーブーケを見つけた。 ほかのものに見劣りしないようにか、ビロード生地のクッションに重厚な細工が施された猫足の椅子の上にそれは置かれていた。 思わず苦笑いで歩み寄る。 まさかこんな所へ飾られるとは思っていなかった。本人の楽屋へ届けるように伝票に書いたはずだったけれど、何かの手違いでロビーへ来てしまったらしい。 見劣りするのは間違いない。 だって、隣のスタンドフラワーよりかはゼロが二桁は少ない。 ここは学生の財布には世知辛い世界なんだよなぁ。 そんなことを考えながら、真っ赤なばらの花をツンとつつく。 【竹野円様 主演おめでとうございます。 内木穂乃より】 花の中に埋めた手書きのメッセージカードは、ビロード生地のクッションの上に丁寧に飾られていた。
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