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小説パート3(5) さらに、話しは続いた。先生が言う事は 「貴方のように、人を殺めたいと言う仮想体験は、非常に稀で、この様な仮想体験をしてもらうには、まだサンプルがありません。だからと言って、殺人者を募集するのは、怖いです。殺人者に何をされるか分かりません。 でも、ご安心ください。貴方の空想の意識を取り出し、それを映像化し貴方にお見せする事は出来ると思います」 俺はそんな事が実際に出来るのか?と思ったが、最後の 「思います」のところが引っ掛かった。 断定ではない。推量である。 「ところで、料金はお幾らになるのでしょうか?」 と聞く俺に、先生は微笑み浮かべて言った。 「幾らぐらいだと思いますか?」 (分かるわけないでしょう!)と心で叫んだが聞こえる筈も無く、俺は冷静に考えた。これほどの、凄い事をするのだ。価格もそれ相当だろう。(ここは、足元を見られたらダメだ。さっき此処にきたのは、俺が最初だと言っていた。 と言う事は、客は皆無だ。思い切って値切ろう。)と思い、手のひらを広げ、指を五本見せた。(50万円位の積もりで有るが、場合によっては、5万円になる。まさか500万円とは言わないだろう) すると美人先生は何を思ったのかわからないが、  「そんなに安くは無いです」と言った。 (安く無い。単位は幾ら)と心で叫んだが、此処は、腹の探り合いだ。「では」と言って、俺は人差し指を立てた。 五本の指より一本の指である。普通は減ってる。 美人先生は、「本当の所を言うと、値段の設定はされていません。何故なら、まだ実験の段階なのです。 これが実現したら、料金はその人の価値観によって変わるでしょう。貴方は幾らを想定しましたか?」 俺は言った。最初思ったよりも少し少なめに。 「5万円の積もりで、出したのですが、安いと言われたので、10万円にしました。」 と、言って先生の顔を見たら、先生は 「良いですよ。貴方の気持ちがそれくらいなら」 と意味深で少し軽蔑した様に笑みを浮かべながら言った。 俺は馬鹿にされたみたいに感じたが、此処は大人の対応だ。仮に幾ら出しても、その様に言われるだろう。 俺は強気に出た。どうせ、客も居ない店だ。 「でも、仮想体験とはいえ、人を殺めるのは、気が引けます。それに、10万円も掛けるのは馬鹿らしいです。 やっぱり、辞めようかと思います」 美人先生は何を思ったのか、大きく股を広げ身を乗り出した。 見ると、ズボンだった。 残念。 身を乗り出し言った言葉が 「只でも良いです。まずは実際に体験出来るかどうかを調べたいのです」 要するに、私は実験されるのだ。モルモットの様に。 複雑な気持ちに覆われた。
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