1 地球人たち

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1 地球人たち

 その日ジョーは、何日にも渡って拾い集めた煙草の吸殻から、念入りに少しずつ煙草の葉を溜め込んでいたものを、薄い葉っぱでくるんだ。次に、その両端から1センチくらいのところを、細い木のツタでぎゅっと縛った。これで、数日は持つ。というか、持たせなくっちゃな。一日に何回、火を起こせるかもわからんのだし。  しかし、とりあえずは「煙草のようなもの」を完成させたということで、ジョーは完全に満ち足りていた。これを作るまでにかかった労力を考えれば、これからあと何日かは「何もせずに」ゆっくりしなくちゃ割が合わない。なんせ、他にこれといって楽しみのない毎日なんだから。  しばらくすると、外へ「狩り」に行っていたザキが戻ってきた。特に嬉しそうでも、悲しそうでもなく。その表情からは、ただ「かったるい」という感情しか読み取れなかった。 「今日、エモノは……?」  ジョーの問いに、ザキはこれもかったるそうに、首を横に振った。別に今日が特別ダメだったってわけじゃない。いつものことなのだ。それは十分わかっていたけど、ジョーは挨拶代わりに聞いてみただけだった。いわば、出かけていたザキへの「お帰りなさい」的な声かけ、みたいなものだった。 「こないだのネズミはもう尻尾しか残ってないし。あとは、焼いたムカデの節が幾つかあるだけだな……」 「あるだけでも、ましさ」  ザキは狩りの道具を地面に放り投げて、ジョーの横に寝転んだ。道具といっても、手作りの弓と矢で、素早いエモノは到底仕留められるものではない。地震の影響か、もしくは地底人が狩リ損ねたかで弱っている、そんな生き物しか捕まえられないだろう。地底人の狩りの腕前はそれは見事なもので、昼間は日が眩しくて見えない代わりに夜目が効くし、聴力や嗅覚も人間より数段上らしい。地震の前にも密かに地上に出ては狩りをしていたんじゃないかっていう、もっぱらのウワサだった。  宇宙人の奴らは宇宙船から持ってきた保存食を食べてるらしいので、人間と食料の取り合いにならないのは幸いだった。ゾンビの奴らは、人間でも地底人でも宇宙人でもいっさいかまわず噛りつくから、食べ物には困ってないだろう。最近は、宇宙人ゾンビや地底人ゾンビも増えて来たって話もある。地震でかなり数は減ったようだが、なんだかんだこの状況で一番「強い」のはゾンビなんじゃないか。
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