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……まあゾンビたち自身は、「俺たち今、地球上で一番サバイバルに強いぜイエー」なんて思うこともないだろうけどな。そう思うこともない奴らが一番生き残れそうってのも、皮肉なもんだな。……ザキは狭い洞窟の地面に横たわりながら、そんなことを考えていた。
「ナナの奴、ほんとに戻ってくるかな……?」
ジョーが独り言のようにそう呟くと、ザキも独り言のようにそれに答えた。
「ああ、たぶんな。生きていれば、の話だが……」
ザキとジョー、そしてナナは、混迷極まるこの世界で、1ヶ月ほど前に出会った。
ジョーとナナは恋人同士、ザキはひとりきりでこの世界を生き抜いてきていた。互いに「自分以外、自分たち以外の生き残りに出会えた」ことに感激し、共にこの世界を生きていこうと、一度は決意したのであるが。
なんといっても、まだ20代の男2人に、20歳になったばかりの女ひとりでのサバイバルである。しかもナナは、10代の頃にクラビアモデルみたいな仕事をかじってたそうで、さすがにサバイバル生活で痩せてきていて薄汚れた服も着てはいるが、その可愛さとスタイルは男心をそそるのに十分な魅力を残していた。当然の如く、「ひとりの女を2人の男が奪い合う」なんて事態に発展し始めた。
それまで、ジョーとナナが「運の良さ」でなんとか生きてきたのに比べると、ザキは自分なりに工夫しながら生き延びて来たと言えるだろう。ジョーはこんな世界になる前は、ユーチューバーとしてそれなりに知られた存在であり、もちろんそれなりの金もあり、ゾンビ騒ぎが始まったくらいまでは、ゾンビ出現動画をUPしたりして更に稼いでいたのだが。
それもみな、安定した電源供給が常に確保出来ていた世界での話である。地震が来て地底人が出没するようになったあたりから、もうサバイバルでは「役立たず」とも言える存在になっていた。ここまで生きてこれたのは、そんな自分を認識して、あらゆることから逃げ回っていたからだろう。何か金になりそうな題材をいち早く嗅ぎ分ける「鼻の強さ」がユーチューバーとして成功した理由だったが、それがこの世界では「危険なものを嗅ぎ分ける」ことに繋がったらしい。人間、何が幸いするかわからないものだ。
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