1 地球人たち

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 これに対し、ザキは昔から1人を好み、休日には1人だけでキャンプするのが趣味だった。ゾンビ騒ぎが起きた時も山の奥地でキャンプ中で、山中ではゾンビに遭遇せず、しかも1人きりだったのでウイルスに感染もせずという幸運をもたらした。地震が発生した以降も、森の中にひと1人が通れるくらいの裂け目から入れる洞窟を見つけ、そこに住み家を構え。その後は、持ち前のサバイバル術で生き延びてきたのである。そんな風に、ジョーとザキは全く対象的なやり方で生きてきたのだった。  そしてやはり、いつの世も女が惹かれるのは、男の「生活力」である。ましてや、こんな世界ではなおさら。自身で狩りをしながらサバイバルしてきたザキを見て、運の良さだけで生き延びてきたようなジョーと比較してみた時に。ナナが「これから生きていくなら、この人と」とザキについて考えるのも無理はない。更には、明らかにザキは自分に対して「好意」を抱いているような素振りを見せているのだから。  当然のごとく、ジョーとザキとでナナを巡っての争いが起き。争ううち、ナナはそんな2人に呆れたのか、1人で洞窟を出ていってしまった。ザキが使っていた、ナイフや七つ道具などのサバイバル用品を、持てるだけ持っていって。  そんなわけで、残された男2人は、争う理由がなくなったのだから、当たり前といえば当たり前だが。それ以上争うことなく、こうしてまったりとしたサバイバルを続けているのであった。サバイバル道具を持っていったとはいえ、女1人で生き残るにはあまりに厳しい世界なので、ナナもそのうち戻ってくるのではないか……「生きていれば、の話だけどな」。  先程ザキがそう言ったのは、こんな経緯があったのである。  女がいれば2人ともそれなりに頑張って食料を見つけに出かけるのだが、男2人となると、「最低限」のものがあればいいやと、どうしても怠惰になってしまう。ザキもサバイバル術には長けていたが、さすがに自分で道具を作ったことはなかった。しかも、弓などを作るのに適した大型のナイフもナナに持ってかれてしまったと来ている。  ザキ自身が身に付けていた小さなナイフでせっせせっせと木を刻んで、やっと作った弓ではどうにも具合が悪かった。おかげで狩りに出ても、成果はサッパリだ。食えるものがないんだから、後は出来るだけエネルギーを消費しないようにするしかない。それで2人は、ますます体を動かさず、まったりと日々を過ごしているのであった。
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