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「誕生日プレゼント、何が欲しい?」
女の子にプレゼントを送るのなんて初めての僕は、どうしたら良いのか全くわからず、とりあえず瑠奈に直接訊いてみる事にした。
「うーん……。ホウキかな?」
「えっ? ホウキって、掃除する時使うホウキの事?」
付き合い始めて一年近く。瑠奈の突飛な行動にも慣れてきた僕だったけれど、この時は思わず聞き返してしまった。
「うん。高校の時ね、初めてのバイト代でホウキを買ったんだ。大きくて、こう先が枝みたいなのでできているヤツ」
「竹ぼうきってヤツだね?」
何でそんな物を。
「そうそう。どうしても空を飛んでみたくて」
「えっと……」
「でもダメだった」
「それは残念だったね……」
そりゃそうだろう。
「やっぱ、スペシャル感が足りなかったのかなって」
「そうなのかな……」
スペシャル感とは……。
「だから大好きな幸君から貰ったホウキなら、空飛べるかな、って」
「いや、それは無理かと……」
「だってそういう魔法ものって、大概はお爺さんのだったり、亡くなったお母さんが残してくれた物だったりしない?」
「さあ、わからないけど……」
「だから幸君から貰った物なら、きっと飛べると思うんだ」
そう言って瑠奈は黒い瞳をキラキラさせながら可愛らしく笑ってみせた。
僕は仕方ないので、「高い所から飛び降りて試してみない」と約束させたうえで、誕生日に竹ぼうきをプレゼントした。
それだけでは寂しいので、クリスマスツリーのように竹の小枝の部分に飴や小物なんかを括りつけてデコってみたら、イベント好きな瑠奈は大喜びだった。
さりげなく瑠奈の頭文字のRを模った小さなピアスもぶら下げてみたけれど、気に入ってくれたようで、毎日のように彼女の柔らかそうな耳たぶでキラリと輝いている。
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