僕の彼女

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「あっ……」  僕はピンク色をしたドット柄のカーテンから外を覗き込みながら思わず声を出した。  重く澱んだ鉛色の空から落ちる雫が、アスファルトの上に水玉模様を作り始めていた。  しまった。洗濯物をベランダに干しっぱなしにしてきてしまった。  僕のアパートのベランダは、日除け程度の屋根はあるものの、本降りになると雨が吹き込んできてしまい、洗濯物がびしょびしょになってしまうのだ。  でも、せっかく瑠奈の部屋に遊びに来たところなのに、洗濯物の為に帰るのもな……。  ここからだと僕のアパートまでは、30分以上はかかるのだ。  そう思いながら振り返ると、何だか企んだような瑠奈の笑顔が目に入ってきて、僕はビクリと体を震わせた。  すると、彼女は急に自分のお腹の辺りを抑え込んでみせた。 「えっ、どうしたの? お腹痛いの?」  僕が慌ててそう訊くと、瑠奈はフルフルと小さな顔を振ってみせる。 「ここは何?」 「は? お(なか)?」 「別の言い方で」 「はら」 「違う」  えっ? ま、待てよ……。  ま、まさか、オメデタとか……。  どうしよう……。  いや、僕は瑠奈の事を本当に大事に想ってるし、ゆくゆくは結婚しようと思ってる訳だから……。  でも、僕達はまだ学生で……。  今何ヶ月なんだろう……。  やっと内定を貰ったところだから、大学中退するよりは卒業を待った方が将来的には……。  でも、出産費用ってどのぐらいかかるんだろう……。  ご両親を説得できるだろうか……。  いろいろな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡って、爆発してしまいそうだ。  でもここは……。 「だ、大丈夫だよ!」  何が大丈夫なのかは良くわからなかったけれど、僕は瑠奈の華奢な肩をガシリと掴むと、ひとまずそう言ってみる。  それは瑠奈に対してというよりも、自分自身を励ます為に放った言葉だったような気もするけれど……。
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