僕の彼女

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「幸君、何言ってるの?」  瑠奈はキョトンとした顔でこちらを見つめ返してくる。 「えっ? だって、オメデタ……、じゃないの?」 「んな訳ないじゃん」 「何だー……」  思わず「良かった」と言いかけてから、僕は言葉を飲み込んだ。  は違うな……。  ここは男らしく、何があっても動じる事なく責任ある行動を取らなければ。 「でも……」  クリクリとした小さな黒い瞳で僕を見上げながら、瑠奈はふわりと微笑んだ。 「『大丈夫』って言ってくれて嬉しかった。幸君、男らしい」 「いやいや、そんな事は……」  彼女の言葉に、何だかくすぐったくなって、僕はつむじの辺りをポリポリとかいてみせた。  すると瑠奈は急に真顔になると、「違うけど、まあそれで良いや」と呟いた。 「え?」  僕の頭の中は?マークでいっぱいだ。  突然、瑠奈の小さな目が天井と壁の隙間の辺りに向けられる。  それはどこか焦点が合っていないようで……。  そう思った途端、瑠奈はバタリと床の上に倒れ込んでしまった。 「ええっ! 今度はどうしたの?」  僕が慌ててその肉の薄い背中に手を当てみても、瑠奈はピクリとも動かない。 「瑠奈!」  必死に呼びかけてみても長い睫毛は伏せられたままだ。  
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