僕の彼女

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 どうしよう……。 「瑠奈! 瑠奈!」  こういう時、動かしてはダメな事はわかっていても、ついそのか細い体をゆすってしまう。 「そ、そうだ、救急車……」  僕がスマホを取りに行こうと、立ち上がったその時だった。  何者かが僕の足首を掴んだ。 「ひいいっ!」  思わず情けない声を出してしまった僕を、瑠奈が片目だけ開けながら見上げていた。 「私はどうなってる?」 「……って、瑠奈、大丈夫?」 「うん。私は今どうなってる?」 「急に倒れたんだよ。瑠奈、本当に大丈夫なの?」 「うん。だから私は今どういう状態?」 「……えっと、倒れてる」 「倒れてるって事はどういう事が考えられる?」  どうしたんだろう。  倒れた時に頭でも打ってしまったのだろうか。  いつも以上に変だ。 「……具合が悪い、の?」  僕がそう答えると、瑠奈はさらに訊いてくる。 「もっと酷くなると?」 「病気?」 「もっと」 「重病?」  瑠奈は何か重い病気なのだろうか……。 「それでも治らなかったら?」 「えっ……、瑠奈。もしかしてそんな酷い病気なの?」  僕は恐る恐る訊いてみる。  彼女は小さな頭をフルフルと振った。 「病気が酷くなって、最終的にはどうなる?」  もっと酷くなって、最終的に……。  そんな……。  僕は駆け寄ると、その小さな体を抱きしめた。 「……嫌だよ。瑠奈、死なないで!」  思わずそう叫ぶと、温かいものが頬を伝う。 「そう、『死』」  瑠奈はそう言うと、ムクリと起き上がった。  そして、何事もなかったかのようにナチュラルウッド調のチェストに近づいていく。  僕がポカンと眺めていると、瑠奈は一番上の引き出しから何やらカードような物を取り出した。    その見た事がある柄は……。 「る、瑠奈、もしかしてそれ、ショウちゃんから……」  くすねた物では……。 「大丈夫。これはノーマルの『テリードンEX』」  そう言ってカードの裏側を見せる瑠奈に、僕はほっと息をついた。 「『テリードン』は何タイプ?」  ポチモンにはタイプがある。頭タイプは頭脳技が得意だし、足タイプは足技が得意だ。 「『テリードン』は確か手タイプだったよね」 『テリードン』の得意技は10万張り手だ。 「そう、手」  彼女はゆっくりと頷いてみせた。    
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