僕の彼女

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「そして、これは?」  そう言って瑠奈は、柔らかそうな自分の耳たぶを指し示す。  そこには僕がホウキのツリーにつけてあげたRの形をしたピアスが光っていた。  彼女はあれからずっとこのピアスをつけてくれているのだ。 「僕があげたピアス?」  瑠奈は小さく頷いてみせる。 「何の形?」 「R」 「Rはどういう意味?」 「瑠奈(るな)の頭文字のR」 「幸君、ありがとう!」  そう言うと瑠奈は、満面の笑みで万歳をした。 「えっ、な、何?」  よくわからないけど、この誘導尋問のようなやりとりは終わったって事かな? 「最初から繋げてみて?」  瑠奈の問いに僕は首を捻る。 「もう、最初がどれだかわかんないんだけど」 「んー、じゃあ、幸君は窓の外を眺めながら何て言った?」 「えっ、窓の外?」  ドット柄のカーテンをめくってみると、ガラス窓の向こうはすっかり雨に濡れている。  遥か上空から落ちてくる小さな雫が、ところどころにできている水たまりに、幾重にも輪を作っていた。 「あ……」  洗濯物が……。 「そうそう、それ」  瑠奈は再びお腹の辺りを抑えてみせる。 「瑠奈、やっぱりお腹痛いの?」 「ううん。幸君がデキちゃったと勘違いしちゃって。その後幸君の『大丈夫』って言葉に私が『嬉しい、男らしい』って言ったら幸君何て言った?」 「んん? もう何が何やら……」 「幸君『やいや、そんな事は……』って言ったんだよ」 「そうだっけ? もう覚えてないや」 「でも本当はここは何か答えて欲しかった」  瑠奈はお腹の辺りを指し示す。 「お腹でもはらでもなくて、腸?」 「もっと上」 「盲腸」 「それも腸でしょ。もっと上」 「胃?」 「そうそう」  瑠奈は嬉しそうに頷く。  そしてまたバタリと倒れ込む。 「うわぁ、瑠奈大丈夫?」 「だから大丈夫だってば。これは何?」 「あ……死?」  瑠奈はうんうんと首を縦に振ると、『テリードンEX』のカードを見せる。 「手?」  うんうん、と満足そうな瑠奈。  そしてピアスを見せる。 「瑠奈のる?」 「それを続けて」 「あ、()()()……()」  自分が口にした言葉に、頭の方がカッと熱くなる。   「幸君、ありがとう! 瑠奈も幸君の事愛してる!」  瑠奈は僕に抱きつきながら嬉しそうにそう言った。  それからというもの、瑠奈は僕が「あっ」と声をあげると、すかさずお腹の辺りを抑えてからバタリと倒れてみせるようになった。  もちろんその手には『テリードンEX』のカードが必ず握りしめられていて、反対側の指は自分の耳たぶを指し示している。  でも、本当は僕の「あっ」は半分ぐらいわざとだって事は、瑠奈には内緒だ。                    〈完〉
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