僕の初恋が踏み台になっている

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-------------    真中くんは、  ・とにかく天然が好き  ・できる女子よりダメ女子が良い  ・愛犬にべた惚れ  ・恋愛には消極的  ・グイグイ来られると引くタイプ  まずは、さりげなく視界に入ること。根気強く、天然アピール。(これは、日々、実践あるのみ)  こちらから視線は送らないこと。好きな素振りは一切見せないこと。大事なのは焦らないこと。時間をかけてじっくりやり切ること。  近頃の真中くんはいつも私を見ている。  兄の情報がこんなに役立つなんて。  高校からキャラ変して大成功!  私の天然キャラ演技は完璧だ!  この長い前振りは、今日この日のため。  決戦はバレンタイン。  大好きな真中くん。  私は彼を必ず、手に入れるんだ。  --------------    僕は息を飲んだ。  驚愕(きょうがく)して、この恋の結末から彼女の行動を(さかのぼ)っていく。  あれも?  それに、あれも? 『うん』  掃除中に頷く藤木さん。  あれはそっちの意味だったのか。  全部、全部、全部、騙されていた。  僕はその場に崩れ落ちそうになるのをなんとか堪える。そして、自分が受けたこの衝撃を少しでも藤木さんにも味わってもらいたいと思った。だってこのままでは、僕の初恋が悲し過ぎるじゃないか。  僕は『真中くん攻略ノート』の最後の行に、赤ペンを使って追記する。 -------------- ・天然は好きだが天然キャラは嫌いである --------------  そしてノートをそっと机に戻し、僕は彼女に無言の別れを告げたのだった。  初恋は実らないものらしい。それにしたって、あんまりじゃないかと思う。  僕は自宅で愛犬のお腹に顔を(うず)めて、人生はじめての失恋に涙した。  。  
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