僕の初恋が踏み台になっている

5/8
前へ
/8ページ
次へ
 男子バスケ部のアイドル的な存在だったマネージャーに告白された。けれど、彼女は僕の好みのタイプとは真逆のテキパキと事を運べる人だったので、僕に恋愛感情が湧く事は無かった。  やはり僕は、藤木さんが好きなのだ。 「真中、お前なんでフったんだよ」 「いつも感謝してるけど、僕のタイプじゃなかったから」 「ムカつくわー。モテる奴の断る理由、ムカつくわー。うちのアイドルだぞ」  チームメイトから非難の声が飛ぶ。 「お前、中学の頃からそのスタンスらしいな」 「ずっと好きなタイプは一貫してるかな」 「例えば?」 「……あ、うん、例えば……同じクラスの藤木さんみたいな人」  僕は照れながら答える。 「藤木さんって、藤木先輩の妹だろ?」 「え?」  僕は驚いた。  強豪校であるうちの部は、とにかく部員数も多い。レギュラーである一軍とその他の二軍では練習メニューも分かれており、同じ部活の先輩後輩であっても交流のない人達がたくさん存在する。  藤木先輩は三年生だが、恐らく一度も一軍チームに入っていた事がない。あまり会話をした事が無いせいか、僕は藤木さんが先輩の妹だとは全く知らなかった。  *  * 「藤木先輩。お疲れ様です! 僕、同じクラスの藤木さんが先輩の妹だって、今日はじめて知りました」  僕はさっそく練習終わりに、藤木先輩を探して声をかけた。 「真中、お疲れ! ああ、俺の妹だよ。俺が言うのもアレなんだけど……、あいつお前のファンなんだよ」 「え?」  僕の心臓は跳ねた。  まさか藤木さんが僕のファンだったなんて。 「中学の頃、部活の練習試合に来ていたお前を見て一目惚れしたらしくてさ。高校に入ってからは、俺にお前の事ばっかり聞いてくるんだよ」  そんなに前から藤木さんが僕を思ってくれていたとは意外だった。中学や、高校一年のクラスは違ったので、僕は全く藤木さんの存在を認識していなかったのだ。  明日、藤木さんに話し掛けてみよう。僕はそう決心する。話し下手な僕でも、彼女のお兄さんである先輩の話題を出せばきっと会話も弾むだろう。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加