願いの穴くぐり

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「あちゃー、思ったより小さいね。これはさすがに無理か……」  お昼過ぎ。予定通り班行動で訪れた東大寺大仏殿にて、仁美がしまったと額に手を当てて言う。「私も無理かなぁ」と同じ班で行動している凛音も呟いた。  実際に目にする柱の穴は、確かに、思っていたよりずっと小さかった。とても大人一人が通れるとは思えない。私はそこそこ小柄な方だけど、それでも怪しい気がする。  これなら通れずに告白出来なくても仕方ない。言い訳がききそうな状況にホッとしながら両腕、頭、肩の順に穴に突っ込む。しかし案の定、肩がハマって動きが止まった。 「よし、引っ張るよ慶ちゃん!」  え? 突然の宣言と同時に右腕が引っ張られ、肩に痛みが走った。痛い痛い、やめて凛音! 「何してるの! 仁美ちゃんも手伝って!」 「え、何言ってるの凛音」 「慶ちゃんは何かお願い事があるから、こんな無謀な挑戦してるんでしょ? 私たちも協力しなきゃ!」  どこまでも真っ直ぐで純粋な凛音の声が頭上から降ってくる。瞬間、言い訳が出来て安堵していたはずの私の身体は、柱の反対側を目指して必死に身体を捩り始めていた。
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