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私が先にソファに座ると、肘が触れるほど近くに仁美も座った。私はさりげなく少し距離を取る。
「昨日はごめんね。助けられなくて」
「そんな、仁美がいなかったらもっと大変なことになってたよ。ありがと」
「うん」
いきなり沈黙が訪れた。私から何か言うべきなのか、そもそも仁美は私と何を語るつもりなのか。しばらく思案していると、仁美の方から先に沈黙を破った。
「今日、凛音に告白しなよ」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が漏れた。仁美が続ける。
「慶のことだから、元々近いうちに告白するつもりだったんじゃないの?」
驚いたが、その通りだった。だけどそれは昨日までの話だ。
昨日の女子トークを経て、私は告白をやめるつもりになっていた。どうせもうフラれたことになっているのだから、そのままこの気持ちごとなかったことにしてしまおうと。
私が同性に恋愛感情を抱く人間であることは変わらないが、具体的なその対象が凛音でなくなるのなら裏切りの罪悪感は薄らぐはずだ。
今はまだ無理だけど、時間をかけてこの想いを風化させ、ただの親友になれれば。
……なんて御託を並べているけれど、やっぱり好きな人に、凛音に伝えるのが怖いだけだ。
もしかしたら私は最初から、告白を諦めるための言い訳を探していたのかもしれない。
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