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「慶は真面目すぎるんだよ、ドが付くほどに」
「だって、凛音は私が下心持って接してるなんて夢にも思わないはずだもん。こんなのフェアじゃないよ」
「男女の恋愛だって同じじゃん。よくある話でしょ、ただの友達だと思ってたのに告白されたとか」
「でも……」
仁美が不意に私を抱き寄せた。私は慌てて彼女の身体に触れないように隙間を作ろうとするが、逃がさないとばかりに背中に腕を回される。
「慶って、こういう時絶対私の身体に触れないようにするよね。凛音に対しても。それに今だけじゃない。昨日の夜も『人の気配がすると寝付けない』とか言って一人だけ皆から離れた場所に布団敷いたり、お風呂の時間もずらしたり。いつも何かと理由を付けて、私たちとの接触を避けてる」
「だって……」
「分かってるよ。私たちに気を遣ってるんでしょ? 前からずっと変だなって思ってたの。だから慶に同性愛者だって言われた時、むしろ納得した。慶のそういう誠実なところ、きっと凛音にも伝わるはずだから。そんな人に好きだって言われて気持ち悪いと思うわけないよ。たとえ同性でも」
仁美が子供をあやすように私の頭を撫でる。おそるおそる背に腕を回し返すと、仁美はフフッと温かい息を漏らした。
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