願いの穴くぐり

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「ひ、引っ張るよ慶! 痛かったら声出してね!」  私が動いたのを見て、仁美も私の左腕を引っ張り始めた。正直結構痛いが、私は声を上げなかった。制服と柱が擦れる音を立てながら、私は少しずつ少しずつ、柱の反対側へと進んでゆく。  難産の末肩がスポンと抜け、後はスルスルと容易く、私は穴をくぐり抜けた。 「やったー! おめでとう、慶ちゃん!」  一体何の騒ぎだと冷ややかな視線を送る観光客たちを尻目に、凛音が手を広げて私に抱きついてくる。私は一瞬距離を取るか逡巡し、結局は彼女の身体を受け止めた。
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