願いの穴くぐり

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「あー、私ちょっとトイレ」  仁美がわざとらしくその場を離れる。凛音は「変なの」と呟いた後で私の目を見て言った。 「で、慶ちゃんは何か願掛けするために柱をぐくったんだよね?」 「う、うん」 「聞いてもいい?」  凛音がキラキラと音が聞こえてきそうな瞳を私に向ける。 「実は、凛音にも関係があることなんだけどさ」 「うんうん」 「……困らせちゃうかもよ? 言っていいの?」 「大丈夫。慶ちゃんのお願いなら、なんだって応援したいもん」  だいぶ含みを持たせて言ったはずが、凛音はどこ吹く風といった様子で受け流す。私はようやくこの時、仁美の言った「大丈夫」という言葉がストンと腹に落ちてきたような気がした。  私は凛音のことが好きだと、同性愛者なのだと凛音に告白することが怖かった。清水の舞台から飛び降りるよりもずっと。  だけど好きだ嫌いだ、男だ女だ女同士だ、大きな問題であることには違いないけれど、私が思っているほどのことではなかったのかもしれない。だって、私たちは友達なんだから。  私は震える喉で一度大きく息を吸い、そして、清水の舞台からえいっと飛び降りた。
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