12人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「あー、私ちょっとトイレ」
仁美がわざとらしくその場を離れる。凛音は「変なの」と呟いた後で私の目を見て言った。
「で、慶ちゃんは何か願掛けするために柱をぐくったんだよね?」
「う、うん」
「聞いてもいい?」
凛音がキラキラと音が聞こえてきそうな瞳を私に向ける。
「実は、凛音にも関係があることなんだけどさ」
「うんうん」
「……困らせちゃうかもよ? 言っていいの?」
「大丈夫。慶ちゃんのお願いなら、なんだって応援したいもん」
だいぶ含みを持たせて言ったはずが、凛音はどこ吹く風といった様子で受け流す。私はようやくこの時、仁美の言った「大丈夫」という言葉がストンと腹に落ちてきたような気がした。
私は凛音のことが好きだと、同性愛者なのだと凛音に告白することが怖かった。清水の舞台から飛び降りるよりもずっと。
だけど好きだ嫌いだ、男だ女だ女同士だ、大きな問題であることには違いないけれど、私が思っているほどのことではなかったのかもしれない。だって、私たちは友達なんだから。
私は震える喉で一度大きく息を吸い、そして、清水の舞台からえいっと飛び降りた。
最初のコメントを投稿しよう!