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「ねぇ、聞いてる?」
笑顔で問い詰めてくる推し。眩しすぎる。
聞いていないとは言えず、また何度も頷く。
「あはは、おねーさん、面白いね」
わたしは全然面白くないですって、口を開こうとすれば伸ばされる手。
ミコの指先がわたしの唇に触れる。
予想していなかった事態にフリーズしていると、親指が唇をなぞってきた。
その感触に意識が遠くなる。
「え、ちょっ、おねーさん?!」
目を回し倒れる寸前、ミコの困ったような声が聞こえた気がした。
◇◆◇
「はっ!」
どれくらい意識を失っていたのか。
気付けば自分の部屋のベッドだった。
「あー、なんだ、夢か」
ミコに会ったのも、ミコが男の子だったのも。
「夢じゃないよ」
すぐ傍で聞こえた、耳馴染みのある声。
「うぇっ……」
変な声が出そうになり、慌てて口を押さえる。
手遅れだった気もするけど、気にしない。
「いきなり倒れたと思ったら、寝てるんだもん。荷物から勝手に住所調べて送らせてもらったよ」
カラオケ店からタクシーで送ってくれたらしい。
「ごめんね?」
「こ、こちらこそ!」
よくわからない謝罪をお互いにすると、ミコは笑顔になった。
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