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「乙姫が通るのを待ってたってのはあるけど……ね?」
前言撤回。この子、腹黒いんじゃ。
そんなわたしの考えを読んだように、ミコの顔が近付いてくる。
「うわーん、もうジュエボの箱推しできないじゃん!」
両手で顔を覆い、叫ぶ。
メンバーを平等に推せなくなったから、箱推しにならない。
もちろん、ユニットとしても好きなのは変わらないけど。それ以上に……。
「わたし、ミコが好きみたい。アイドルとしてだけじゃなくて……」
せっかくの返事も、最後まで言わさてもらえなかった。
目の前にはミコのドアップ。そして、唇に柔らかい感触――今度は指じゃない。
唖然としているわたしの耳に入ったのは、カシャッとシャッターを切る音。
「へへっ、やった。乙女と両想い! ジュエボのグループメッセージで報告しなきゃ!」
チュッと軽いリップ音を立て、唇が離れるとミコは上機嫌でスマートフォンを操作する。
キスの瞬間をスマホで撮ったらしい。
「やだ、送らないで、消して!」
気付いて手を伸ばすも手遅れ。
メッセージアプリを通して『Jewelry Box』のメンバーに写真が送られた。
「乙姫、見て見て。皆からおめでとうって!」
ミコからスマホの画面を見せられると、おめでとうの文字とハートのスタンプが乱舞している。
ミコを助けようとして、囚われてしまった。
「騙された!」
わたしは今度こそ全力で叫んだ。
でも、好きな人に騙されるのも悪くはない……かな。
END?
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