スタート

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スタート

 少ししてからさっきと違う店員さんが席に来た。 『お待たせしました。ぬる燗1合とお猪口(ちょこ)と先付けの壬生菜と人参と油揚げの煮浸しです。あと、お箸とお手拭きです。』 テーブルの上に各々置いて奥へと戻って行った。  何となくお互いお手拭きのビニール袋を開けてタオルを取り出し手を拭きだす。頃合いを見て私は1合徳利を手に持ち遠藤さんにお猪口を持つように促し、お酒を注ぐ。そしてもう1つのお猪口にもお酒を注ぐ。1合徳利からお猪口に持ち替える。 「では、今日も仕事お疲れ様でした。乾杯。」 静かにお猪口を合わせる。1口呑む。ぬる燗なので、スッと喉を通る。あと口が若干辛め。でも、嫌な感じが舌に残らず呑みやすい感じの日本酒。お猪口をもう1度口につける。ぐっと呑む。遠藤さんを見ると既にお猪口を空にして手酌で2杯目を入れていた。 「このお酒呑みやすいですね。ぬる燗やし若干アルコール飛んでるのもあるけど、舌に嫌な辛さが残らへんし。」 『そうやね。ボクも呑みやすくって早々と2杯目入れてしもた。佐藤さんも空やったら次行く?』 と、私のお猪口の中を見てどうする?と言う感じで徳利を少し持ち上げた遠藤さん。 「あっ、ありがとうございます。頂きます。」 お猪口を持ち上げて徳利に近づけると、そのまま注いで、徳利を少し振って残りの量を確かめた。 『あと少ししか残ってへんみたいやし、ボク、貰ってもいい?』 「はい、どうぞ!あの、注ぎましょうか?」 『ううん。いいわ。ありがとう。』 と、言ってお猪口のお酒を少し呑み、継ぎ足した遠藤さん。 『なくなった~。』 と、ニッコリ笑ってお猪口を得意気に振って見せた。 「何かムッチャ得意気ですね~。」 『そうかな?』 「そうですよ~!」 『恥ずかしっ。』 「あっ、先付けの煮浸しも食べません?」 私は、割り箸を割って1口食べてみた。 「あっ、おいしい!ぬる燗と合いそっ。」 お猪口を口に運んで1口呑む。 「あっ!メッチャ合うっ!おいしい!!遠藤さんも試してみて下さい!」 『ほんま?じゃ、食べてみるわ。』 割り箸を割って1口食べて、頷く…煮浸しは胃袋へ…。 『うん、うん、おいしい…。』 お猪口を口に運んで日本酒を呑んだ遠藤さん。 『ホンマや…ムッチャ合う、おいしい!』 「おいしいし、ムッチャ合いますよネ~!」 と言って、お猪口に残っていた日本酒を飲み干して、そっとテーブルに置く。遠藤さんのお猪口を見た。 「あっ、遠藤さんもアルコールなくなりましたね。次頼みます?」 『あー…そうやね。次は、生中にしようかなぁ。』 「生中ですね。私は何にしよっかなぁ。」 テーブルの端に立て掛けてあるメニューを見て考える。 「吟醸酒のコップ酒にしようかなぁ。」 『おっ!行くね~!』 「いや~、明日も仕事やし次はチューハイにしよかどうしようか迷ったんですけど、遠藤さんと呑むの何か楽しそうやし、イテマエ~って感じですわ!」 『最悪、送って行くわ。』 「ありがとうございます!じゃ、注文しますね!」 ボタンを押す。  ちょっとしてから、さっきの店員さんが片手にハンディー端末を持って、注文を聞きに来てくれた。 『お待たせしました。お聞きします。』 「えっと、生中1つと吟醸のコップ酒1つお願いします。」 店員さんが聞きながらハンディー端末に入力していく。 『コップ酒は、冷やですか?』 「いえ、常温で。」 『常温で…。繰り返します。生中1つ、吟醸酒のコップ酒常温を1つで、以上ですね?』 「はい。お願いします。」 『少々お待ち下さい。』 そう言ってハンディー端末をエプロンのポケットにしまって、奥へ戻って行った。    入れ違いに店員さんが料理を持ってきた。 『お待たせ致しました。シーザーサラダ、枝豆、唐揚げ、冷奴、長いも短冊です。』 と、言いながらテーブルの上にのせていく。 『このお皿は、取り皿です。』 取り皿4枚をテーブルの上に置く。 店員さんが目視で伝票と料理を確認する。 『ご注文の料理、以上です。ごゆっくりどうぞ!』 そう言うと、伝票入れに伝票を入れて奥に戻って行った。  『お待たせしました。生中1つと吟醸酒のコップ酒常温お持ちしました!』 その後直ぐに呑み物が運ばれてきた。 『生中のお客様。』 『はい。』 と、軽く手を挙げる遠藤さん。 『はい、どうぞ~。』 遠藤さんの前に生中が置かれる。 『吟醸コップ酒の常温です。』 と、1合升の中に入ったコップ酒を私の前に置かれる。 「ありがとうございます。」 と言いながら、目の前のコップ酒を見てビックリ! 「うわっ!すごっ!溢れてる!升の中、日本酒で溢れてる!」 その様子を見ていた店員さんがニンマリ。 『満タン以上にしときましたヨ!溢れさせときました!ゆっくり呑んで下さいね!』 そう言いながら、伝票入れに伝票を入れて、徳利・お猪口・先付けの器をお盆にのせて奥へ戻って行った。
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