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はずむ会話
「遠藤さん見て下さい、これ!升の中のお酒!」
すすすーーっと遠藤さんの前に1合升を軽く押し運ぶ。
『すごっ!得しましたね、佐藤さん。』
「ホンマに!すごい得した気分です!」
『よかったよかった…さて、料理も揃ったし、温かい内にたべましょか!』
と言いながら、すすすーっと1合升を私の前に戻してくれた。
「はい!食べましょう!」
サラダについているミニトングで先にかかっているドレッシングとサラダを軽く馴染ませて、取り皿に適当に盛り付けて先に遠藤さんの前に置く。もう1つは自分の前に置く。
『あっ、サラダありがとう。』
「いえいえ。ところで遠藤さんは唐揚げにレモンかけはりますか?」
『いや、ボクはかけへんなぁ。』
「じゃ、このレモン貰っていいですか?」
『どうぞ。唐揚げにかけるの?』
「いえ、日本酒に入れるんです。」
『へぇ~。おいしいの?』
「はい!爽やかな味になります。」
『へぇ~、今度やってみよ!』
「じゃ、レモン貰いますね。」
頷く遠藤さんを見て、お箸でレモンを挟んで取り皿に置いた。
「ついでに唐揚げ食べよ。」
大きい口を開けて唐揚げを頬張る。
『おいしい?…って言うか熱くないの?』
口いっぱいに頬張っていて喋れないので頷く。
『ボクは、取りあえず枝豆で生中やなぁ!』
皿から枝豆をとってさやから直接豆を口に入れてモグモグして、飲み込んで生中を呑む…『やっぱり生中には枝豆やなぁ。』
と、しみじみと言う遠藤さん。
「何かおっちゃん?」
『えっ?ボク?何で?』
「えっ、何でって、言い方と雰囲気?」
『そんな歳いってるように見える?』
「いえ、実際そんな歳いったはるように見えへんけど、呑んではる姿見てたら何かおっちゃんぽかったです。」
『……………、気をつけよ…。』
「実際何歳なんですか?」
『ボク27歳。ちなみに佐藤さんは?』
「私は、25歳です。」
『2歳差なんや。』
「思ったより歳近かったですね。」
コップ酒を呑み、口の中に残っている唐揚げを流す。もう1度味を確かめるように呑む。コップの回りについているお酒をお手拭きで拭いて、ついでに指先についたお酒も拭いて、コップからテーブルに垂れたお酒も拭いて、コップをテーブルに置く。
「あっ、このお酒甘めで呑みやすい!」
『吟醸やっけ?』
「はい。吟醸やから香りフルーティーで元々呑みやすいの多いけど、これ特においしいです。」
『何か幸せそうな顔してるなぁ、佐藤さん。』
「いい感じに酔ってきて、幸せです。」
『ところで佐藤さんは休みの日何してるん?』
「休みの日ですか?うーん…1人暮しやし、平日出来ひん掃除・買い出しが主で、空き時間出来たら、車で練習がてらドライブ?とおかずの作り置きをします。」
『おかずの作り置き?』
「煮物とか沢山作って保存袋に入れて冷凍して平日レンジでチンして食べるんです。作る手間も省けるし、少し食費浮くし。」
コップ酒をグビーッと呑む。残りを確認する。
「残り1/3くらい…升のお酒入れてみよ。」
コップに升のお酒を注ぐ。
『佐藤さん、そんな調子良く入れたらあかん、溢れる!』
「んー?大丈夫ですヨ~!…ほら!」
溢れんばかりで表面張力が働いてギリギリセーフの状態を見て貰えてちょっと嬉しくなってしまった。
『おっ!スゴッ!』
「ちょっと失礼して…。」
コップの飲み口にそーっと口をつけてずずっと呑む。
「おいしい。」
長いも短冊を食べる。コップ酒呑む。サラダを食べる。コップ酒呑む。コップ酒に唐揚げに付いていたレモンをぎゅっと搾る。ちょっと行儀悪いけど、使っている割り箸をマドラー代わりにしてお酒とレモン果汁が馴染むように混ぜて呑む。
「んー!おいしいっ!!」
唐揚げを頬張る。
『何かスゴい勢いで食べて呑んでるけど大丈夫か?』
ん?ヤバイ?ちょっと引かれたか?!酔ってきて集中しすぎたか?
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