(33)真夏の結婚式なのでプールいかがです

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 菜智を天蓋の下に案内しながら、両親や親戚といった大人組が集まっているソファーに座ると、オレンジジュースを手渡す。 「私ね、めちゃくちゃ反省してる」 「何が」  サーモンのフリットが美味し過ぎて、私が食い意地の張った姿で指まで舐めてると、取り分けてとジュースを飲みながらアンタのことよと菜智が呆れた顔をする。 「カナダに行かせる切っ掛け作っちゃったのは私じゃない?」 「アレは本当に感謝してる。ありがとね」 「だけど兄貴とのこと知ってたら、あんな無責任なこと言わなかった。結果的に二人を引き裂いたの私なんじゃないかって今でも思う」 「それは激しい思い込みだね」  大盛りに盛り付けた取り皿をフォークと一緒に手渡すと、菜智の意外な悩みに驚いてそんなことはないと繰り返す。 「確かに早い段階で付き合うような話が出たかも知れないけど、私はカナダに行って色んなことを経験出来たから、なんとか翔璃の気持ちを受け止められたの」 「そうかな」 「そうだよ。とてもじゃないけど自信がなくて潰れてたと思う」 「そうなら良いんだけど。だけどさ、私なんとなく昔から美都真が兄貴を好きなの分かってたけど、あんな調子でしょ、近付けないようにしてきた自覚もあったからさ」 「それは仕方ないよ」  反省の言葉を口にしながらも、物凄い勢いで取り皿の上の料理がなくなっていくのを苦笑して見つめると、菜智は美味しいねと目を輝かせつつ、ごめんねと謝る。 「私がそんなだから、高校の時も兄貴とのこと相談出来なかったよね」 「気にし過ぎ。さっきも言ったけど、留学してなかったら、変わる努力しなかったらこうはなってなかったよ。だから菜智には感謝してる」 「美都真ぁ」 「汚いね、食べるか泣くかどっちかにしてね」  泣きじゃくる菜智の涙を拭うと、ちょうどプールから上がってきた翔璃と優吾が、何事かと駆け寄ってきた。 「なんだうるせえな。妊婦はナーバスなのか。その割にめちゃくちゃ食ってるな」 「うっさいわね」 「優吾、お願い。あと任せる」  優吾に席を譲って翔璃の腕を掴むと、菜智が溢した話をざっくりと説明して泣いてる事情を伝える。 「反省させとけ。俺が失った八年はデカい」 「またもう。菜智にも言ったけど、留学してなかったら変わる努力もしなかったし、こうはなってなかったよ」 「ダメ。俺から美都真を奪った罪は重い」 「なにがダメなの、散々遊び倒してよく言うよ。本当にダメなのは翔璃なんだからね」 「下半身が脱走しただけで、心はずっとお前だけ、だろ?」 「だろ? じゃないよ、このバカ!」  みんなの注目を集める中、海パン姿の翔璃の頭を思いっきり叩くとドッと笑いが起きた。  こんなお調子者だけど、私とっても翔璃にとってもそれは紛れもない初恋で、私たちは幸せいっぱいのスタートラインに立った。  願わくば、この先はお互いに相手だけをお相手に出来ることを願ってね(笑) 【完】
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