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「美都真さん、そういえば冨島先生……じゃなかった、翔璃さんの姿が見えませんけど」
杏果ちゃんは辺りを見渡して、タキシード姿の翔璃を探しているようなので、私は苦笑してプールを指差す。
「誰よりも羽目外して遊んでるよ」
ゲストの数が少ないとはいえ、そそくさとタキシードを脱いで、友だちとプールの中で暴れ倒してる姿はまるで子どもだ。
「ショーリはもっとスマートな印象だったよ」
「翔璃が? 冗談でしょ」
「翔璃さん、本当に黙ってたら最高なんですけどね。……あ」
慌てて口元を押さえる杏果ちゃんに、良いのよと鼻を鳴らして笑うと、そろそろプールも楽しんでと更衣室を指差す。
「せっかくだもん。二人もデート気分とまではいかないだろうけど、そろそろ水着に着替えて楽しんでね」
「そうだねミトマ。じゃあ行こうかキョウカ」
「美都真さん、本当に綺麗です。後でまた写真撮りましょうね」
「ありがとう。ほら、楽しんで」
ルークと杏果ちゃんを送り出すと、すでにプールサイドで楽しんでいる同僚に話し掛ける。
一番お世話になっている山根部長も、ご家族みんなを招待したので、お子さんが退屈しないと喜んでくれるのが嬉しい。
「美都真、新婦がうろちょろして。普通のお式じゃそんなのあり得ないわよ」
「菜智、体大丈夫なの」
「病気じゃあるまいし、平気よ」
ぽっこりと少し膨らんだお腹を撫でると、翔璃と同じようにプールの中ではしゃぐ優吾を見て、菜智がゲンナリした様子で呟く。
「あの二人の方が兄弟っぽいよね。バカ丸出しのとことか」
「ごめんね、うちの愚息どもが」
菜智のお腹の子の父親は当然だが、私の弟の優吾だ。
春に一人暮らしを始めた菜智は、同棲だけはしないと、優吾が甲斐甲斐しく私物を持ち込むのを定期的に実家に送り返してたみたいだけど、両親も公認になったのをこれ幸いと優吾が暴走。
菜智に逃げられないためなのか、順番が狂ってしまったけど、授かり婚で既に入籍だけは済ませてるので、私たちは姉妹になった。
「本当に、不思議だよね。そりゃ美都真は唯一無二の親友だよ。だけど兄貴とアンタはともかく、私まで優吾と結婚するとはね」
「ね。どんな縁がどう結ばれるか分からないよね」
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