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飯嶋美都真。高校三年の受験生で歳は十八。そして身長一六三センチで九十キロオーバーした、超ワガママボディの持ち主。
自他共に認めるぽっちゃり、いや、ダイナマイトおデブの私は、昔から愛嬌だけは良くて、周りからはいじられキャラとして可愛がられ、性格は割と陽気な方だと思う。
だけど今、猛烈にピンチな状況に陥っている。
「なあ、それ突っ込むの」
「え、いやぁ、どうだろうね」
ベッドサイドに立て掛けたタブレットにはAVが映し出され、ヘッドホンが外れてしまったその端末から、責め立てられる女優がアンアン喘いでる声が響いてる。
「なんか意外」
「うん、えと……とりあえずなんで居るのかな?」
十八の誕生日の翌日に、親の目を盗んで通販で購入したディルドを片手に握り締めたまま、まるで襲い来る敵を迎え撃つような姿勢で、膝立ちした体を小刻みに震わせる。
「お前の家族、盆休みだから田舎に帰省してるんだろ。ウチのババアが美都真に飯食わせないとって、お前呼んで来いって」
「うん、だからなんで居るの? 鍵閉まってなかったかな」
「閉まってたしインターホン鳴らしても出ないから、優吾の部屋から入った」
「そっか。うん……そっか」
五つ下の弟の名前を聞いて、呪い殺してやりたい衝動をグッと堪えると、私はディルドを握り締めたまま天井を仰ぐ。
当然のことながら、部屋には鍵が付いていない。そして家族全員が祖父母の家に行っているし、一週間は一人きりだからと玄関を戸締りして完全に安心し切っていたことは認めよう。
だけど百歩譲ってもそこまでだ。
「オッケー翔くん、とりあえずもう出てってくれないかな」
「なんで」
後ろ手に静かに部屋のドアを閉めた翔くんこと、隣に住む幼馴染みの兄である植垣翔璃は、そのまま部屋にズカズカと入り込み、ベッドに座って私が握り締めたままのディルドを見つめる。
「いや、なんでじゃないかな」
タブレットから卑猥な喘ぎ声が響く中、真隣を陣取られて、焦って額や体中から汗が噴き出す私とは対照的に、平然とした様子の翔璃は私の手からディルドを取り上げて、目の前でぶるんとそれを振る。
「こんなの使うよりさ、ホンモノ突っ込みたくないの?」
翔璃はタブレットの画面をオフにすると、手に握ったディルドを目の前で見せつけるように、こんなものじゃなくてと繰り返す。
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