作戦会議

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「たけちゃんは、今はこんなだけど昔はモテてたんだぞ!髪の毛だってふさふさで、細くて可愛くてな、Johnnysに入ってたっておかしくなかったんだから」 取谷は翁の肩を組みながら得意げだ。 「いやいやいやいや、ナイナイナイナイ!Johnnys?ジョニオタに殺されますよ?」 美月は軽く笑いながら、肘を卓に付いて顔の前で手を振った。 嫗が無言で一枚の写真を卓に置いた。 その写真はアイドル雑誌の中に掲載されている様な爽やかな小柄な男の子が笑顔で振り向いている。髪の毛は少し茶色がかっていてふんわりサラサラだた。クシャと笑ったつぶらな瞳が母性本能をくすぐる様な可愛さがあった。 「おぉ、これよ!たけちゃんの若い頃」 取谷が懐かしいなぁと翁に話しかけながらグビグビと喉を鳴らしながらビールを飲んだ。 「え!これが翁さんですか?」 美月は次に言おうとした言葉をグッと飲み込んだ。その言葉は『時の流れは残酷だ』 「大変だったんです。豊作さんへの執着が凄くて、豊作さんとデートしてる時に毎回出てくるんですよ、その方の生霊が。友達に相談するとその時間はその方は大学で見たって言うし…。その内私の家でも見る様になったんです。危害を加える訳じゃないんですけど、小さい声でずっと何か呟いてるんです。声小さすぎて聞こえなかったんですけど、私ある日勇気を振り絞って口元を見たんです。そしたらハッキリと動いたんですよ…」 嫗は怪談話の語り部みたいに低い声でゆっくり話したので、美月は嫗の話に引き込まれ卓にやや乗り出す体制になっていった。 「『ワ カ レ ロ』って」 「ヒィ!」 美月は思わず声を上げて後ろに倒れた。 すると、ワンピース女が壁際にうずくまってカタカタ震えているのが見えた。 「え?どうしたんですか?」 「別れろって私も言われた気がします。凄い怖い…怖い…」 「え?大丈夫ですか?」 美月は心配だが、ワンピース女が怖くて触れられない。 翁も嫗も取谷もワンピース女の姿が見えないので何が起きているのか分からず美月の方を伺っていた。 その時、かぐや姫がワンピース女を抱きしめた。 「大丈夫。ここで怖い事は起こらない。私達が付いてるからね」 躊躇なく抱きしめた姿は姫の貫禄があり、美月は触る事すらできなかった自分の器の小ささが恥ずかしくなった。 そして、ワンピース見えない3人衆の心配しそうな姿を見て、美月はこの3人を何処かでバカにしていた事に気付いた。一番ワンピース女に親身になってないのは自分な気がして消えたい気分になっていった。
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