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由理の住んでいるマンションは駅から徒歩で10分位の川沿いに建っている。外観は築20年は過ぎているだろう。まぁどこにでもありそうな白いタイルの外観の4階建てのワンルームマンションだ。
そのマンションは『リバーサイドメゾン』と言う。
川の側だからその名前が付いたのだろう。何とも単純な名前だと美月は感じていた。
今のご時世女の子の一人暮らしならオートロックは条件の一つになっていると言ってもいいだろう。勿論『リバーサイドメゾン』もオートロック仕様になっていた。
しかし美月は実家暮らしの為オートロックに慣れていなかった。
「あれ? どうやって中に入るんだろう? 」
いつもなら部屋番号を押してインターフォンを鳴らせば相手が扉を開けてくれたが、今回はインターフォンを押したところで開けてくれる人はいない。
百合に借りた合鍵を見つめながらマンションの入り口で途方に暮れているとマンションの中から髪の長い白いワンピースの女性が出て行った。
マンションの扉は美月の目の前で勝手に開いてくれたのだ。
「今だ!」
美月は心の中でその女性に感謝しながらマンションの中へと入っていった。
その時、焦げ臭い香りが美月の鼻の奥を突いた。
!?
「火事?」
美月は辺りを確認したが火などは勿論、煙すらも確認出来なかった。
後ろを振り返ると先程出ていった髪の長い女性は既に見えなくなっていた。
「気のせいかな?」
美月はあまり気にせずエレベーターで二階に上がった。
由理の部屋は二階の一番奥にある204号室だ。
エレベーターを降りて右を向くと直ぐに部屋を確認することができる。
その204号室の前だけの電球が切れかかっているのか光が点滅している。
夜のマンションの廊下で204号室だけが物悲しい空気を漂わせていた。
手に持っているスマホの画面を確認するとドラマが始まる3分前になっている。
美月は慌てて204号室のドアを開けた。
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