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ドアを開けると気持ちの良い冷風が美月を出迎えた。
「あぁ〜涼しい〜」
生ぬるい麦茶に大量の氷をぶち込んだ様な幸福感。
「生き返るわ〜〜」
美月はすぐさま部屋にあるテレビを付けた。
「ふぅ。間に合った」
部屋の涼しさに違和感を感じ始めたのはドラマの次週予告が始まった時だった。
汗で湿っていた服はすっかり冷たくなり、むしろ寒い位だった。
美月は身震いをするとクーラーを確認した。
由理がクーラーを付けっぱなしにして出掛けてしまったのだろうかと思ったがクーラーの羽は動いた様子もなくしっかり閉じている。
美月は持ってきた大きなバックからタオルと部屋着を出して浴室に向かった。
熱いシャワーでも浴びて汗ばんでいた肌や髪を洗いたかったし、なにより冷えた身体を温めたかったのだ。
浴室はユニットバスではなく小さいながら脱衣所も付いている。
脱衣所に部屋着とタオルを置いて、美月は風呂場へと入っていきシャワーの温度を高めに設定し直しシャワーを浴びた。
お風呂においてあるシャンプーもコンディショナーも雑誌でよく見るブランドのものだった。由理と自分の経済格差を感じ悲しくなったが、それは直ぐに悔しさに変わっていった。
シャンプーもコンディショナーもこれでもかと思えるくらい贅沢に使ってやれと必要以上にポンプを押しまくった。
「こんな贅沢品使いやがって!韓国にまで行きやがって!くそ!」
浴室中どころか部屋中にフローラルの甘い香りが広がっている事だろう。
なのに強いフローラルの香りをかいくぐってきたかの様にまた焦げ臭い匂いが美月の鼻の奥を再び突っついた。
「あれ?また!?」
美月はふと風呂場の磨りガラス風のドアに目を向けた。
はっきりと見えないドアの向こうに髪の長い女の影がぼんやりと浮き上がるように美月の方を向いて立っているのが見えた。
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